. ページ49
.
『いや、俺今日寄るとこあるからいいや。ふたりで楽しんできて』
俺がそう言ったら眉を下げて、彼女は「そっか、」と呟いた。
寄るとこなんてないけど、まあいいや。Aのちょっと残念そうな顔が見れたからそれでいい。
「じゃあ、また今度行こうね」
『ん、』
「その時はたぶん辰哉が奢るから」
深「なんで俺なんだよ！」
『はは、楽しみにしとく笑』
その辰哉って呼び方とか。
Aがふっかに向ける甘くて柔らかくて視線とか。
やっぱちょっと苦しいけど、でも。
それよりも、Aがふっかの隣で幸せそうなのが見れるのが嬉しくて。
ずっと、ほんとにずっとふっかのことを想ってた彼女を知ってるから、あぁよかったな、って。いまは純粋にそう思える。
「照、またね」
深「気を付けろよー」
『ん、』
こっちを見てふわりと笑うAにどうしようもなく胸が締まるのは、これはもう生理現象だ。
今更抑えようにも抑えられないから、最後に一瞬だけ、Aを視界の中に閉じ込めて。
それからばいばいってこちらに手を振る彼女に向かって笑顔を見せたまま、俺はふたりに背を向けた。
消したくても消えない恋心は、生きていくのには邪魔になるかもしれない。
だけど俺はこの気持ちを大切に抱えて生きていきたいんだ。
それでいろんな感情全部ひっくるめて、
このふたりのことを側で見守っていきたいって、そう思ってる。
だってAも、ふっかも。
俺にとって一番大切なひとに変わりはないのだから。
深「うし、じゃあ俺らも行くか」
「え？あぁ、うん」
深「今日はなに食べる？」
「ラーメンは流石になしね」
深「だよなぁ、じゃあ駅前のいつものとこ行く？」
「ん、そうしよ」
深「ってかA、鼻んとこ赤くなってる」
「え、うそ…寒いからかな」
深「はは、かわい」
「っ、……はぁ、もう」
だんだん遠ざかっていくふたりの会話にほんの少し耳を傾けながら、
俺は冷えた手をポケットにしまって夜の街を歩き出した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3808人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こゆき(プロフ) - acoさん» コメントありがとうございます…！照くん、私も自分で書いていてチクチク心を痛めていました笑 いつになるかは分かりませんが、みんなが幸せになれるお話を書こうと思っているので、そこまでお付き合いいただけたら嬉しいです…！！これからもよろしくお願いします！ (2020年11月7日 11時) (
レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
aco(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！照に幸せになって欲しい！私が幸せにしたい！！なんて思いながら、一緒に心の端っこをチクチクさせてました。ふっかのお話だけど、照が好きな私はいつもどこかで照も幸せになって欲しいなって読んでます（笑）これからも応援してます！ (2020年11月4日 11時) (レス) id: fa0e891597 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - mikkyさん» こちらこそ、いつも読んでくださってありがとうございます…！コメント嬉しいです！わぁ、ほんとですか…！そのように言っていただけて嬉しいです…！これからもよろしくお願いします！ (2020年8月31日 18時) (レス) id: 19841568b6 (このIDを非表示/違反報告)
mikky(プロフ) - 更新ありがとうございます^ ^Twitterの方も読みました！素敵過ぎなお話でした...！ちょっと焦らされてるふっかさんも大好きです。（笑）またの更新待ってます^ ^ (2020年8月19日 23時) (レス) id: 27e731af2f (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - きこさん» ありがとうございます、更新楽しみにていただけているというお声が聞けてとても嬉しいです…！申請、たぶん通していると思うのですが楽しんでいただけましたかね…？楽しんでいただけていたら幸いです！今後もよろしくお願いします…！ (2020年8月19日 19時) (レス) id: 8e77232333 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こゆき
| 作成日時：2020年6月17日 13時
