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岩「ふっか?」
彼との通話を続けていれば、横に立っていた照にそう聞かれ、スマホを耳に挟みながらコクリと頷く。
そうすれば、電話の向こうの彼にもその声が聞こえたのか、
ーーーん?もしかしてそこに照いる?
と訊ねられた。
『え?うん、いるよ。駅まで送ってくれて』
ーーーそっか、…じゃあ早く行かねーとな。待ってて、すぐ行くから。
そこでぷつりと切れた通話。
待ってて、か。
今朝も言われたけど、やっぱり本当に迎えにきてくれるとわかると嬉しいもので。
岩「迎えに来るって?」
『…うん』
岩「はは、嬉しそ笑」
どうやらまた顔に出ていたらしい。
切れた通話の画面に無意識に頰を緩めた私を見て、照はくしゃりと笑う。
岩「付き合ってるんだもんな」
『…、なんか照に言われると変な感じするね』
こうなるまでの経緯を全部知ってる彼だから。
最近はやっと恋人という関係性にも慣れてきたものの、改まって言われるとなんだか不思議な感じだ。
岩「……俺も、」
絡まった視線。数秒の間。
なんでか彼が少し切なげに眉を下げたような気がしたけど、それは私の気のせいだろうか。
岩「いや、なんか変な感じすんなーと思って。たぶんそのうち慣れんだろうけど」
ふっと、すぐにその表情を崩した照がそう言って笑った。
私の頭に伸びてきた大きな手がぐしゃぐしゃと髪を撫でる。
私よりはるかに背の高い彼だから、伸びてきた腕に隠れてその顔が見えなくなった。
岩「………早く、慣れないとな」
『ん?』
ぼそりと落とされた少し暗い声色の言葉は、私の耳を通り抜ける前に車の音にかき消されて。
何を言ったのかと聞き返せば、柔らかに微笑んだ彼が「なんでもないよ」と首を軽く横に振る。
岩「…ふっかが来るまであそこで待ってよっか」
『そうだね、寒いし』
照のその提案に私は駅前の雑貨屋さんへと足を向けた。
ショーウィンドウに並ぶ小物たち。その中に好みのものを見つけたものだから、私の意識はそっちに集中して。
『あ、あれ可愛い。ね、照』
岩「…ん?あぁ、うん」
だから彼が私の耳元で煌めくピアスを見て僅かに顔を歪めていたことにも、
彼を振り返った私にそれを気づかれないようにふわりと優しく笑っていたことにも。
なにひとつ、気づくことはなかった。
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こゆき(プロフ) - acoさん» コメントありがとうございます…!照くん、私も自分で書いていてチクチク心を痛めていました笑 いつになるかは分かりませんが、みんなが幸せになれるお話を書こうと思っているので、そこまでお付き合いいただけたら嬉しいです…!!これからもよろしくお願いします! (2020年11月7日 11時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
aco(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます!照に幸せになって欲しい!私が幸せにしたい!!なんて思いながら、一緒に心の端っこをチクチクさせてました。ふっかのお話だけど、照が好きな私はいつもどこかで照も幸せになって欲しいなって読んでます(笑)これからも応援してます! (2020年11月4日 11時) (レス) id: fa0e891597 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - mikkyさん» こちらこそ、いつも読んでくださってありがとうございます…!コメント嬉しいです!わぁ、ほんとですか…!そのように言っていただけて嬉しいです…!これからもよろしくお願いします! (2020年8月31日 18時) (レス) id: 19841568b6 (このIDを非表示/違反報告)
mikky(プロフ) - 更新ありがとうございます^ ^Twitterの方も読みました!素敵過ぎなお話でした...!ちょっと焦らされてるふっかさんも大好きです。(笑)またの更新待ってます^ ^ (2020年8月19日 23時) (レス) id: 27e731af2f (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - きこさん» ありがとうございます、更新楽しみにていただけているというお声が聞けてとても嬉しいです…!申請、たぶん通していると思うのですが楽しんでいただけましたかね…?楽しんでいただけていたら幸いです!今後もよろしくお願いします…! (2020年8月19日 19時) (レス) id: 8e77232333 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こゆき | 作成日時:2020年6月17日 13時