Dear My Lovers

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『向井くん、』

向「Aさん！めっちゃ久しぶりやないですか！」


そう言って目元を緩めた向井くんは、手に持っていたスマホをしまう。


向「お昼食べに来たんですか？」
『うん、』
向「ひとりで？」

『いや、翔太と来たよ。今は電話してるから後で来るけど、』
向「翔太くん！」


翔太という言葉に反応した彼は、会いたいわーと頰を緩ませた。

そっか、翔太と向井くんはもともと仲良いんだもんね。


『向井くんは？ひとり？』
向「俺はめめと一緒ですよ。たぶんそろそろくると思うんですけど、」


"めめ"

聞いた瞬間に、彼の顔が頭に浮かんだ。

それからじわりと私の胸の中に広がった、なんとも言えない気まずさ。


向「…っあー、会わへんほうがいいっすかね？」

『いや私はいいんだけど、…向こうが嫌かな、と、」


最後に彼と話したあの日以来、個人的な連絡は取っていなかったし、あれからすぐ冬休みに入ったから大学で会うこともなかった。

どうせ今日バイト先で会うだろうから、どっちにしろ顔を合わせることにはなるんだけど、


…心の準備が、ね。


どんな顔して会ったらいいのか、どう接していいのか、わからない。


向「めめが会うの嫌なわけないやないですか」
『…でも、』

向「大丈夫っすよ、あいつちゃんともう諦めてるから。普通に接したらええと思いますよ。ーーーってかもう来ちゃったし」


そう言うと向井くんが私の後ろに目線をやって、ふにゃりと笑う。

…まじか。


未だにどうやって接しようかという不安にはなにひとつ答えが出ていないけど、どうやら考えている暇はないらしい。



「………A、さん、？」


背後から聞こえた、少しの動揺を含んだような声色。


…あーもう。変に気にしても向こうもやりにくいだろうから、普通に今まで通りにしよう。


その声に私はゆっくり首だけ動かして、そして声の主の姿を視界に捉えた。


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