. ページ19
>Sakuma side.
俺をその視界の中に入れた彼女が、「えっと、」と何度か瞬きをして、その動きに長い睫毛が揺れる。
「……もしかして、佐久間？」
小さく綺麗な声で首を傾げたAに、うんと頷けば、少し複雑そうな表情を浮かべた。
…そりゃそうか。
Aの記憶に残る俺は、きっと思い出したいものではないだろうから。
『久しぶり。』
「…ん。」
今作れる最大限の笑顔でそう言えば、彼女はちょっと驚いた顔をして、それから唇で綺麗な弧を描く。
卒業して以来、全く会うことはなかったけど。
ずっと会いたくて、でもちゃんと俺が変わってから会おうと我慢してた。
なんか雰囲気が少し柔らかくなった？
髪も伸びたし、服も大人っぽいし。
あーあ。…またどんどん俺から離れて行っちゃってる。
「…なんか、違う人みたい。」
俺があの頃とは違う彼女を見るように、彼女もまた、あの頃とは違う俺を見て、ぼそりとそう呟く。
『髪色変えたからかな？』
そう言いながら自分の金髪を一束つまんで引っ張れば、Aは「…似合ってるね、それ。」と少し笑った。
その笑顔にどくんと、あの春の日、君と初めて会った時と同じように。心臓が一つ脈打つ。
…あぁ、やっぱり。
俺はまだ、忘れられていない。
まるでタイムスリップしたかのように、あの頃の気持ちがポンポンと俺の胸の中に蘇ってくる。
俺が黙り込んだことによって生まれた空白の時間。
Aは俺に向けていた視線を少し下げて、困ってる顔をしてる。
なんか話さなきゃ、やっと会えたんだから、
…おかしいな、こういう時に先に話し出すことには得意になったはずなのに。
いざAを目の前にすると、何から話していいかわからない。
聞きたいことはたくさんあるんだ。
俺の知らない3年間のこととか、
ふっかとはその後どうなったのか、とか。
あとは、……俺のことはどう思ってるのか、とか。
漂った沈黙に気まずくなったのか、彼女は何も言わずに再び窓の外に目を向けた。
……やっぱり、遠いな。
彼女と俺との間のこの2メートルくらいの距離が、まるで今の俺とAの心の距離を表しているかのよう。
『…あのさ、』
なんとか口を開いて発した声にAは視線を俺に戻す。
一瞬合った目は、「…あ、」という彼女の声と共に離れていって。
「なーにしてんの、」
俺の背後から、悠長で、でもどこか鋭い声が聞こえた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3808人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こゆき(プロフ) - acoさん» コメントありがとうございます…！照くん、私も自分で書いていてチクチク心を痛めていました笑 いつになるかは分かりませんが、みんなが幸せになれるお話を書こうと思っているので、そこまでお付き合いいただけたら嬉しいです…！！これからもよろしくお願いします！ (2020年11月7日 11時) (
レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
aco(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！照に幸せになって欲しい！私が幸せにしたい！！なんて思いながら、一緒に心の端っこをチクチクさせてました。ふっかのお話だけど、照が好きな私はいつもどこかで照も幸せになって欲しいなって読んでます（笑）これからも応援してます！ (2020年11月4日 11時) (レス) id: fa0e891597 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - mikkyさん» こちらこそ、いつも読んでくださってありがとうございます…！コメント嬉しいです！わぁ、ほんとですか…！そのように言っていただけて嬉しいです…！これからもよろしくお願いします！ (2020年8月31日 18時) (レス) id: 19841568b6 (このIDを非表示/違反報告)
mikky(プロフ) - 更新ありがとうございます^ ^Twitterの方も読みました！素敵過ぎなお話でした...！ちょっと焦らされてるふっかさんも大好きです。（笑）またの更新待ってます^ ^ (2020年8月19日 23時) (レス) id: 27e731af2f (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - きこさん» ありがとうございます、更新楽しみにていただけているというお声が聞けてとても嬉しいです…！申請、たぶん通していると思うのですが楽しんでいただけましたかね…？楽しんでいただけていたら幸いです！今後もよろしくお願いします…！ (2020年8月19日 19時) (レス) id: 8e77232333 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こゆき
| 作成日時：2020年6月17日 13時
