鱗のつばさ (ページ3)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:157,086 hit

story2 ページ3

side監督生
.

寮のベルが鳴った。

朝は特に誰かと一緒に行くなんてことがないので、もっぱらグリムと二人だがなんとも珍しい。

寝ぼけ眼を擦りながら重い扉を開けると、目元にトランプの模様が描かれた二人組がなにやら興奮した様子で駆け寄ってきた。

「なあユウ、聞いたか！」

「オクタヴィネルの先輩が復帰するんだってよ！オレ一回でいいから聞いてみたかったんだ！」

二人のその声に、また首を傾げた。

オクタヴィネルの先輩と言えばあの双子と、そして自分が密かに想いを寄せている銀髪の先輩しか思い当たらない。

しかも彼らは休むようなことをしているようには見えなかった。ならば別の人なのだろう。

「それってなんのこと？」

「ああ……もしかしてユウは知らないのか。セイレーン先輩だよ。とっても歌が上手いんだ」

「NRCに入る前から有名なんだ、テレビに出たことだってある」

「そんなに歌が上手いのか？」

「上手いなんてもんじゃないぜグリム。あの人はまさにセイレーンだ」

セイレーン。昔本で読んだことがある。

上半身は人間で、下半身が鳥。

歌が上手く、その歌声に惑わされた船員は遭難してしまう。

そんな人が、ここにいるなんて聞いたことがなかった。

そもそも自分はこの世界の住人ではないし、魔法も使えない。

みなが見惚れる歌を歌う人なんて見たこともない。

「今日の夜、モストロ・ラウンジで演奏会があるんだ。早めに行けば入れるか……？」

「どうだろうな、今日はみんな浮き足立ってる。オレたち一年が入れるかどうか……」

食堂に向かいながら、三人と一匹でそう会話を交わす。

大食堂に行ってみれば、そこはいつもより少し騒がしくて、そして一番端の席に視線が集中していた。

.