DEAR．大切な君へ～Kei.I (ページ11)

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Dear.９ページ11

あなたside

あれからニ週間。
慧から連絡は来ない。
その代わりというか、生放送の番組に出てるのを何回かテレビで見かけた。
多分それで連絡が来ないんだろう。

私はといえば、この間作成した資料。
あの資料、相手側の評判が何故か良かったらしく、資料作成を任されたり、会議に参加したりと忙しい生活を送ってた。

そんなこんなで連絡する気力すらなかった。

『ただいま…っと』

やっと明日明後日は休み。
ゆっくりしようか、ショッピングにでも出かけようか。
そんなことを考えながら、やる事をさっさと済ませて、ソファーへと座った。

ココア片手にテレビのリモコンを操作しながらチャンネルを変えていく。

『(何もやってないな…。)』

見たいチャンネルも無く、そのまま消そうとしたときだった。
CMがあけて出てきた人物に思わず手が止まる。

司会者と会話をしていくメンバーさんたち。
その後ろの方で笑ってる慧。
その姿を見て思い出すのはカフェの時の慧。

『…やっぱり、遠いね』

画面越しに見る彼と、この間目の前にいた彼。
久々に会って、連絡先を交換されて、LINEでやり取りしたあの一連の出来事は夢なんじゃないか。

きっと、私にとって都合のいい夢を見ていたんだ。
そう思うほどに現実味がない。

ぼーっとテレビを見つめながらそんなことを思っていれば歌が始まっていた。慧のソロパート。

『(この声、やっぱり好きだなぁ…)』

好きが溢れてきて同仕様もないくらい、胸が苦しくなる。
ふと目に入ったスマホを手に取り、トーク画面を開く。

そこには二週間前にしたやり取り。

偶然でも、神様の気まぐれだったとしても。
また彼と繋がった。その細い細い糸が、簡単に切れてしまいそうで、消えてくのが怖くなる。

『自分から手放した癖にね…』

あの時、違う選択をすれば、また違った未来になったのだろうか。
彼の側にいれたのだろうか。

いつの間にか歌は終わっていて、次のアーティストへと変わっていた。

“いつでも連絡してきていいから。”

ふと思い出したのはあの時の言葉。
自分から手放した。
この気持ちにずっと蓋をしてきた。
でも…

この繋がりがまた、消えるのが怖いと思ってる自分がいる。
前みたいには無理でも、知り合いの位置なら、あるいは…

A生放送、お疲れ様。

――――――多分ここから私の歯車は大きく動き出したんだ。