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幽霊少女は、涙をポロリと流した。
海に囲まれたこの島に、水滴が一滴落ちたところでなんにも変化はない。
ゆらりゆらり、今日も船は海を浮かぶ。
誰の目も気にせず、歌を歌う。
そう、「ビンクスの酒」だ。
にわかには信じられない話だが、
幽霊はいる。
嘘だ！と吐き捨てる者もいた。
…でも、知っている。
麦わらの一味は知っているから。
ある者は彼女を救う薬を作り、
ある者は情報を集めた。
体を鍛えた。歌を歌った。
夢を語った。話しかけた。
…それは一見、意味の無い行為だった。
傍から見ればおかしな集団で、
鼻で笑われてしまうこともあった。
…それでも、麦わらの一味はやめなかった。
一人の少女を救うために。
誰にも届かない努力かもしれない、
一時はそう思うこともあったが、
それは確実に、彼女の胸に届いていた。
「みんな、ありがとう。」
いつしかそんな言葉が一味の背後に轟いていた。
「A！」
船医、トニートニー・チョッパーは振り向く。
「やあ、久しぶり。」
涙の跡はもう消えていて、やっと大人になれた。
でも、もうお別れなんだ。
「…ごめん、まだ薬はできてないんだ。」
俯く仲間たちに私は一言声をかけた。
「もう、私は消えてしまう。」
その言葉は、皆を混沌に陥らせた。
…どういうことだ？
「生まれ変わるの。
だから、だから、次はちゃんと、生きたまま。
皆にお礼を言うから、待っていて。」
…幽霊少女。
長く語り継がれたお話は、今終わりを迎えた。
これは、愉快な仲間たちしか知らないお話だ。
ああ、A。次会うときは、
「もっと高みで。」
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作者名：名無し | 作成日時：2021年9月12日 16時
