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「懐かしいなぁ、幽霊少女。」
サンジが、水面に打ち上げられた本の表紙を見て、そういう。
「なんだサンジ、知ってんのか？」
ウソップとルフィ、チョッパーの3人は、サンジの方をチラリと見る。
「ああ、ガキの頃よく読んでたよ。」
サンジは、昔を懐かしむような、どこか憂いを帯びた顔をしながらそう返した。
「どういう話なんだ？もうこの本は水に濡れてて読めねぇ。」
ウソップたちは、サンジに本のあらすじを聞く。
「ああ、いいぜ。…ただ、もう随分昔の話になるもんだから、ちょっとは間違ってるかもしんないけどな。」
だいぶ昔からある童話らしく、サンジは「どんな話だったけな…｡」と考えた。
「それでもいいぞ！」
チョッパーは目を輝かせている。
「…えーっと、昔から海には、幽霊の少女がいた。それはそれは、美しくて、彼女に恋をする海賊や船乗りもそう珍しくはなかったそうだ。…でも、少女はいつも孤独だった。何しろ幽霊だったもんで、誰にも触れることはできなかったし、触れられることもできなかったらしいから。その上、話すとかのコミュニケーションは取れても、彼女はいつの間にかふわふわと消えてしまって、デートや同棲もままならない状態だった。」
サンジは、ストーリーを思い出しながら、自分の言葉で淡々と説明していった。
「続きは無いのか？」
「幽霊の女の子は友達もできなかったのか？可哀想だな…。」
そんなサンジに、ルフィは続きはなんだと急かす。
対してチョッパーは、異端ゆえに友達が出来なかった幽霊少女を、自らの過去と重ね合わせて同情していた。
「あー、悪ぃ。続きは忘れちまった。…何だったっけなぁ。ガキの頃読んだ本は同じものばっかりだったから全部覚えてるはずなんだが。」
サンジは、どうして忘れてしまったのだろうと考えていた。
「幽霊少女は、友達ができても、上手くいかなかったのよ。彼女は自らの意思に反して、急に体が透けてしまったり、相手を不幸にさせてしまったりするものだから。」
サンジの話を聴きながらも、サンジ特製のオレンジシャーベットを頬張っていたナミが語り始めた。
「ナミ、知ってるのか？」
ルフィは、続きの話が聞けると喜びの表情を浮かべた。
ルフィがひとつの話に夢中になるなんて珍しい。
「ええ、勿論。有名よ。」
ナミは、シャーベットをまた1口、頬張りながらも喋り始めた。
「流石ナミすわん！」
サンジは、目をハートにしながらそう言った。
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作者名：名無し | 作成日時：2021年9月12日 16時
