【ハイキュー!!】最低ランクも戦える【超能力パロ】

戦える３９【赤葦】 ページ40

「黒尾さん、」
「ああ、ありゃ【半・超能力】だな。不完全だけど、アレがあの伊達工のデカイのを倒す突破口になると思うぜ」
「ええ、ですが」
「皆まで言うな赤葦、わかってる」


お互い試合に釘付けになりながら話す。
先に【半・超能力】までこぎつけたのは、ウチの渡貫さんだ。
しかし、だ。俺達が懸念しているのは、相手が伊達工期待のルーキーで、相当な戦闘センスの持ち主であるということ。たぶん、感覚を掴めばすぐにでも超能力発動まで持っていくだろう。


模擬戦や自分達で練習するのとはまた違う、「実戦」だからこそ開花することもある。たぶん、彼はそういうタイプだ。


絶対に負けられない、土壇場でのどんでん返し…言ってしまえば、『火事場の馬鹿力』というヤツ。
彼…黄金川貫至は、Aクラス在籍ながら超能力が開花していないというこの学園において特異な存在だ。
もちろん一年生の優勝候補筆頭は白鳥沢の五色だ。だけど、今大会では黄金川も注目が集まっているのもまた事実。
そして密かに囁かれているのは、実力が未知数である月島。
そう、渡貫さんが喧嘩を売った張本人である。


「今年のルーキー戦、波乱だな」


もちろん、渡貫さんだって良くも悪くも注目を集めている。


「誰が先に開花させてやるもんか！」
「お前よりも先に開花してやるッス！」


ノーガードの殴り合いは、苛烈を極めていた。
どちらかが仕掛ければ、どちらかの隙をついて攻撃に変える。ずっとそれの繰り返し。


お互いが同じやり方だから、凄く焦っている。たぶん、超能力が使えない分「他」を磨いてきた同士だから。その手が、今回ばかりは効かないのだ。
だから、この勝負。
どちらか先に、冷静になった方の勝ちだ。


どうにかして落ち着かせなければ、だがどうやって――


「――あずさちゃんっ！」


谷地さんが、声を張った。


「！ 仁花…」


その声に気がついた渡貫さんは、ピタリと動きを止めて、目を丸くしてこちらを見る。
数瞬の間ではあるが、二人は静かに見つめ合っていた。


「オラァ！」


しかしよそ見をした事で一気に距離を詰められ、そのまま攻撃を叩き込まれる。


――かと、思いきや。


谷地さんの一声に完全に冷静さを取り戻した渡貫さんは、黒尾さんと殴り合いをした時のように最小限の動きで攻撃を受け流し、腹に膝を叩き込んだ。


「がっは…！」


頭に血が上れば、動きは単調になる。
今まさに黄金川はその状態で、冷静になった分勝機はこちらにある。

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