戦える29【松川】 ページ30
「アイツ…渡貫、すげえな。まさか超能力使わずに体力とすばしっこさだけで喰らいついてんぞ」
「つっても花巻も結構手加減してっけどな」
手加減は、まあしている。だけど、それでも、相手はあの花巻だ。ランクのことを考えると、ランクに見合わないくらい強いと思う。どんどん動きのキレが増してるから、そこらへんはたぶん超能力の片鱗が現れ始めているのだろう。アイツがEランクだという根本的な理由は超能力を使える状況が限定されているから。今その片鱗が見え始めている、ということは、それの範囲が広がってきている証拠だ。
きっとずっと諦めずに鍛錬してきたのだろう。あの動きは、ちょっとやそっとの努力で得られるモンじゃない。
しかし突然あずさは動きを止める。訝しく思ったらしい花巻が警戒しながら近づいた。
「あ、たまが…!」
そう言って苦しそうに呻く。どうやら頭が痛いらしく、ついさっきまで動き回っていたとは思えないくらいに真っ青になっていた。
「あずさ、大丈夫か!?」
あずさは座り込み、頭を抱えた。あまりに突然すぎることに、花巻と俺はめちゃくちゃ焦る。
「お、おい、どうしよ、あずさが」
「うわ、い、岩泉、俺らどうしたら」
「落ち着けお前ら、狼狽え過ぎだ。花巻は背中擦ってやれ。松川は水とか持ってこい、少しでも落ち着いたら飲ませろ。俺は医務の人引っ張ってくるわ!」
さすが岩泉! と花巻と声を合わせた、俺も水を取ってこなくては――と、思った矢先。出口が何者かによって開かれた。
「ちょっとお前ら、なんで俺だけ除け者にすんのさ! 酷くない!? 及川さん傷ついたんですけど!」
最悪だ。及川がやってきたのだ。
低ランク嫌いの、及川が。
「おいか、」
「…は? Eランクの、渡貫あずさ……?」
言わんこっちゃねえ。俺も岩泉も、足を止めた。いざというとき、すぐに及川を止められるように。
及川の顔がどんどん歪んでいく。その顔は、普段の端正な顔立ちをこれでもかというほど憎悪に染めて――
(……ん?)
確かに、憎悪、には染まっている。
だけどその表情は、どこか何かを期待しているような――
「! 及川!?」
花巻はやっと及川に気がついたらしく、慌てふためく。及川はそれに見向きもせず、憎悪と期待に歪ませた表情であずさを見つめていた。
「っは…、だ、れ…?」
頭痛に苛まれながら、乱入してきた及川にあずさはそう言った。
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志織(プロフ) - ルルさん» ありがとうございます(笑)まあ矢巾くんも色々あるので、よければ彼のことも見守ってあげて下さい(笑) (2017年1月20日 19時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - うわぁ、この辺凄いムカツク。屈辱的な負けはryって言うのは酷い言いぐされですよ!Eランクだって、侮辱され続けるのは癪に触るんですぅ!夢主ちゃんは下克上、上等なんですぅ!あ、更新頑張って下さい (2017年1月20日 2時) (レス) id: e052dda088 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 瑠璃さん» お気に召して頂けたようで良かったです(*^^*)設定多いと自分でわからなくなりそうだったので、これくらいの設定量になりました(笑)コメント、ありがとうございます! (2017年1月18日 1時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - ファンタジー系は設定が無駄に多くついていけない所があって苦手なのですが、この話は徐々に紐が解けていってとても面白いです!!更新楽しみにしてます!! (2017年1月17日 19時) (レス) id: c4ea085584 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - キャロルさん» 気になって頂けたなら書き直したかいがありました(*^^*)ありがとうございます! (2017年1月14日 19時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:志織 | 作成日時:2016年3月28日 22時