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ジューンブライドに消えていく #赤葦 ページ7

人の想いは千差万別。すぐに移ろうものもあれば一生執着し続けるものもある。全てが一生涯、一途なものであればいい。俺はそう思う。
一度付き合ったからといってそれが続いて結婚まで持ち込むのは本当に難しいことだし、結婚したからといって全てがうまくいくわけでもない。そんなことはわかっている。


想いの強さに違いはあれど、それが同じものには変わりない。家族でも友人でもない、もっと不確かな赤い糸だからこそ、その絆を確固たるものにするためにお互いが好きになってもらえるよう努力をしなくてはならない。


まあ、俺は自分の想いすら伝えていないのだけど。


――ジューンブライドに相応しい六月、仕事場の上司が白く波打つウエディングドレスに身を包んで、ヴァージンロードを歩いていく。もしこの世界が俺の思う通りになるのなら、彼女を待つ新郎は紛れもなく俺だろう。けれど世界とはそううまくいくものではなく、そこに立つのは全く知らない男性。紳士的な佇まいの彼は、既に薄く涙をためている。


とてもお似合いだ。苦々しい何かが込み上げてくるのを必死にこらえて笑顔を貼り付ける。俺は、どうしてここにいるんだろう。今更後悔したって意味はないのに。「赤葦の癖っ毛は柔らかくて素敵だね」と屈託なく笑うAさんを思い出した。


きっともう、俺の手は届かない。


それならもう、好きでいるのは辛いだけ。できるなら、俺がアナタを愛したかった。愛してほしかった。綺麗な想いは、一生綺麗なままでいてほしかった。


パチパチと拍手をすると、不意に彼女と目が合う。仮にもお気に入りの部下という立場ゆえか、Aさんは泣き笑いをしながら口パクで「ありがとう」と言う。俺はこの人の、泣き虫で律儀なところが本当に好きだった。


俺を好きになってくれなかったアナタなら、俺はいらない。
自分の気持ちをなかったことにするために、正反対の言葉を小さく呟いた。



▼ 届かなかった男 ✕ 何も知らない女

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志織(プロフ) - mokyunさん» コメントありがとうございます!松川くんのこのお話はいつか書きたいなーと思っていたのですが、せっかくなので短編集に載せました。お気に召して頂けたようで良かったです!他のキャラも色々書こうと思っていますので、ぜひ楽しんでいってください! (2018年1月22日 21時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
mokyun(プロフ) - どのお話もステキですが、特に大人のまっつん。いいですね… 外堀から埋めていって、逃げられないね?どうする?っみたいな!? 他にどんな男子がでてくるのか楽しみです! (2018年1月22日 2時) (レス) id: e5a3b0aa31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:志織 | 作成日時:2018年1月14日 2時

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