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お互いの呼吸音がやけに大きく聞こえる。
松川の瞳の中にやけに不細工な顔をした自分がいて、松川はそんな私を見ているのだと、そう思うと訳もわからず逃げ出したい気持ちになった。
「…全部聞いたんだ。どうしてそんなに俺のことを敵視するのかって。色々話したのにお前、覚えてないんだもんなあ」
「い、色々って…」
「色々だよ。さっきみたいに一個一個質問してったら、お前言ったんだよ。『松川が女の子にデレデレすんのやだ』って。そんで、確認した。俺のこと好きなのかって。そしたら『うん』って」
――一瞬、
時計の音も、衣擦れの音も、呼吸音でさえ、全てが遮断された。
冗談じゃない、誰がそんなこと。そう言いたかったというのに私の口は一向に開かず、掠れた空気が通り抜けてゆくだけだった。
誰が、なんだって？ ありえないという気持ちでいっぱいで、けれど張り詰めたこの空気が嫌で嫌で、無理矢理笑顔を作って誤魔化そうと躍起になる。
「…あ、はは。そんなのに騙されるわけないでしょ、馬鹿じゃないの」
乾いた笑みだけが部屋に響く。依然松川は黙って私を見つめるだけで、その口元はしっかりと引き結ばれている。
徐々に尻すぼみになっていく笑い声に、部屋の温度は下がるばかり。思わず身震いしたのは、寝起きだからか、それとも。
「――お前さ、そろそろ素直になったらどうなの。ていうか、なってくれないと困るんだけど」
「……え、」
「あのさあ、酔い潰れてる女の子が数いる中でどうして俺がお前を連れ帰ったのか、わかんねーほどお馬鹿ちゃんなんですかね」
好きなんですけど。
さらっと放たれた言葉に、さらっと奪われた唇。沸点を超えてしまったかのように顔は赤く、熱くなってしまっている。
「な、な、あ、」
「言っとくけど、告白は二回目。ついでにキスも二回目。まあAが寝ちゃったから何もなかったワケだけど………俺はこのまま、続きしてもいいよ？」
「なんで、まだ返事もなにも……！」
「昨日聞いた。付き合うって言った」
「〜〜〜っ」
「認めろよ、好きだって」
じっと私を見つめる瞳に耐えかねて、ついに私は白旗を挙げた。うんと頷けば、再び唇の熱を奪われていく。
やはりこの男は私よりも何枚も上手らしい。
▼ 100を知る男 ✕ 0から始める女
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志織(プロフ) - mokyunさん» コメントありがとうございます！松川くんのこのお話はいつか書きたいなーと思っていたのですが、せっかくなので短編集に載せました。お気に召して頂けたようで良かったです！他のキャラも色々書こうと思っていますので、ぜひ楽しんでいってください！ (2018年1月22日 21時) (
レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
mokyun(プロフ) - どのお話もステキですが、特に大人のまっつん。いいですね… 外堀から埋めていって、逃げられないね？どうする？っみたいな!? 他にどんな男子がでてくるのか楽しみです! (2018年1月22日 2時) (レス) id: e5a3b0aa31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志織
| 作成日時：2018年1月14日 2時
