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高校に上がって二回目の夏。
目前に迫る夏休みに、教室中に浮かれたような空気が充満するこの季節、それを微塵も感じさせないのが私の隣の席に座る矢巾秀である。


「なあ〜佐原」
「なに」
「俺の夏休み部活漬けで、女の子と海に行くっていう長年の夢が今年も叶いそうにないんだけど」
「そっか」


ルックスでいえば学年トップクラス。話しやすいし愛嬌もある、それから年上からのウケがいい。そんな男・矢巾秀は、くりくりとした大きな瞳を輝かせるほどに、女の子という存在が大好きである。
今年で二年目の付き合いになるが、どうやら彼が変人であるらしいということは周知の事実であった。


なぜなら。


「井上さんってスタイルいーと思わね?」
「そうだね」
「くるみは女の子らしくてかわいい」
「うんうん」
「みのりちゃんはきれいってかんじ」
「そうね」
「なあ佐原」
「なあに」
「結婚を前提に付き合お」


これである。
ひとしきり誰々さんかわいいね、きれいだねと褒めたあとで、私に求愛の言葉をはくのだ。その数々の言動が不可解過ぎて、彼は『変人』という称号を欲しいままにしている。
しかもそれが発動するのは、現在私のみ。


「……大人になっても気持ちが変わらなかったら結婚しようね」
「なんだか子供に言い聞かせてるみたいだな。じゃあ付き合う?」


わざわざ私の顔を覗き込んで上目遣いでそう聞いてくる矢巾の瞳は、からかっているのか本気なのかちょっとよくわからないけれど、とにかく照明をうけてきらきらと光っていた。


「今は部活に専念してね」
「してるっつーの…」


そう言うと、毎回しょぼしょぼとしおれる。
そうなってから一日はどこを行くにも私の制服の裾を掴んでついてくるのだ。まるでカルガモの親子のようだと親友に笑われたのを覚えている。


「なあー」
「ん?」
「けっこん」
「ばかじゃないの…」


――こんな変人に絆され始めている私も、大概『変人』なのかもしれない。
 
 
 

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志織(プロフ) - あるてぃめっつさん» 矢巾くんの作品まで読んでいただけて嬉しいです…!思わずきゅんとできるような作品を作っていきたいと思っております。ご読了ありがとうございました! (2017年12月4日 22時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっつ(プロフ) - すごく今更感がありますがこちらも読みました…!矢巾くんいけめんすぎてしんどいです…(笑)これからもあなた様の作品できゅんきゅんさせてもらいます。 (2017年12月4日 21時) (レス) id: 3614360162 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 蜜柑の皮。さん» 閲覧ありがとうございます!私も矢巾くんを推しているのですが、あまりに小説が少ないので今回書こうと決心致しました(笑)かっこよく書けているのなら幸いです。応援ありがとうございます! (2017年10月23日 23時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!作品に出会えてよかった、そんな風に言って頂けるなんて書き手冥利に尽きます…!閲覧ありがとうございました! (2017年10月23日 23時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の皮。(プロフ) - 矢巾くんの小説って珍しいですね!私は密かに国見くんと赤葦などを推しつつ、矢巾くんも推してたのでめちゃくちゃ嬉しいです!これからも応援してます!矢巾くんのかっこよさがやばい… (2017年10月23日 22時) (レス) id: 37e5c1fab4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:志織 | 作成日時:2017年10月23日 8時

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