青城マネジ、ギャップやべえ【青葉城西】

12話「溝口くんと俺」 ページ12

「まあ、俺はまず接骨院に行かなくてはいけないんですけどね」
「まだ落ち込んでんのか及川」


あのまま部活を始めようとしたら岩ちゃんに怒られた。まあ、そうだよね。そうなるよね……今は溝口くんに接骨院まで車で送ってもらっている途中だ。
野郎と二人で車なんか乗って楽しい訳がない。


「……そういや、最近明るくなったよなあの子」
「あの子？ …ああ、千冬ちゃんのこと？」
「そう、堀田」


ちゃんと部員とも会話するようになったみたいだし、と少しほっとしたような、嬉しそうな顔をする。俺達の面倒をみるコーチとして、気にかけていてくれたのかもしれない。


「堀田はあんまり喋らないからなぁ」
「と、思うじゃん？ 実は千冬ちゃん、意外と喋るんだよ」
「へえ、そうなのか。部活じゃそんなに喋ってるイメージがないから、気がつかなかったな」
「溝口くん、千冬ちゃんのことナメちゃだめだからね〜？」
「ナメてねーわ」
「凄いんだよ千冬ちゃん、なんたってめっちゃ大量にピア、むぐっ！！」
「……え？ 何してんだお前」


――あっっっぶねえ！！！
咄嗟に口元を手のひらで覆った。やべえ、これ溝口くんには絶対言えないやつだった。ていうか、学校関係者には口が裂けても言っちゃいけないやつだ。あんな大量にピアスあけてたら千冬ちゃんが怒られるのは避けられないし……まあ、流石に部活謹慎とかにはならないとは思うけど。


え？ 大丈夫だよね？


そんな俺の心配を余所に、溝口くんが「何唸ってんだよ、うんこか？」と呆れ顔でそう言う。呆れたいのは寧ろこっちだと言いたいね。この人たまに何も考えずに喋るから、そういう点じゃ岩ちゃんと共通点がなくもないんだけれど、ちょっと直した方がいいと思う。


とりあえず、後輩自慢は程々にしておこうと思う。
　
　
　

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