青城マネジ、ギャップやべえ【青葉城西】

10話「岩泉さん、自撮りできない」 ページ10

「歌い疲れた…」
「ジュース取ってくるね」
「あ、俺も行くわ」
「よし、俺は荷物見張ってるわ。メロンソーダで」
「さり気にパシんな」


と、言いつつもグラスを受け取っていった金田一。こういう紳士的なところがもっときちんと伝われば、女子にモテるんだろうな。いや、金田一がモテない原因はワックスで固めたあの髪型にあるんだろうな…。バレーの邪魔になるからとやってるらしいけど、休日にもやってるところを見ると癖になっているのかもしれない。


「コーラ、コーラ飲もう」
「飲みすぎると太るぞ」
「マネージャーは結構動くから大丈夫」


そんな軽口を叩きながらコーラをグラスに並々と注ぐ。パチパチと弾け飛ぶ炭酸に、早く喉の奥に流し込んでしまいたくなった。その場で飲むか飲むまいか迷っていると、後ろから「よう金田一」と聞き覚えのある声が友人の名を呼んだ。


「岩泉さん！」
「お前も来てたんだな。そっちは友達か？」
「あ、コイツは…」


私の顔はそんなに印象が薄いのだろうか。こんな格好をしていても、誰か一人くらいは気づくんじゃ…と思っていたけれど、そんなことはないらしい。


「岩泉さん、私です。堀田です」
「………ん！？ 堀田って、マネージャーの堀田千冬か！？」
「ウス、その堀田っすよ。初見じゃわかんないですよね」
「うおおお、ピアスやべーな！？ なんだ、その…腕輪！」
「ブレスレットです」
「そうそれ！ ゴツいな！」
「ありがとうございます」
「(今のは褒め言葉なのか…？)」
「皆で写真撮ろう。及川に自慢する」


でも自撮りできねーから友達連れてくる！ と言うので、部屋番号を教えてもらうとなんとお向かいの部屋だった。
ジュースを置きに戻って国見に岩泉さんが来ていることを説明していると、「邪魔するぜ」と岩泉さんが扉を開けた。


岩泉さんのお友達さんがスマホを構えて「はい、チーズ」と合図して、パシャリ。あとで送るわと言った岩泉さんは、お友達さんを連れて戻っていった。あの人自撮りできないのか、ちょっとかわいいな。


「岩泉さん…つーか、うちの先輩達ってさ、俺達が言うのもなんだけど結構後輩のこと好きだよね」
「そうだな。可愛がってもらってる自覚はあるわ」
「うちの部活は皆優しい先輩ばっかりだからねぇ」


改めて、恵まれているんだなあと再認識した。
　
　
　

11話「後輩ともっと仲良くしたい先輩達の話」→←9話「金田一はスパダリになりそう」

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