青城マネジ、ギャップやべえ【青葉城西】

30話「伴侶って何だっけ？」 ページ30

昼休憩になった。音駒はどうやら合宿所からお弁当を配布されていたらしく、栄養バランスの良さそうなそれを大事に抱えてランチルームへと入ってきた。
トントン、と肩を叩かれて振り向くと、夜久さんが「よっ」と手をひらりと掲げた。


「夜久さん、お久しぶりです」
「ん、久しぶり。なんだかいつもと全然違うな？」
「学校でまであんな格好できませんよ、ましてや今はお手伝いじゃなくてれっきとしたマネージャーなので」


そう胸を張ると、夜久さんは悪戯っ子のような笑みを浮かべて「妬けるね」と言った。


「千冬が知らんヤローに取られた！ って黒尾が騒いでたわ」
「鉄朗おもしろーい」
「でも喜んでたよ、千冬ちゃんが楽しそうだからさ」


夜久さんにからかい気味に小突かれて、恥ずかしさから苦笑をもらす。
照れ隠しに、私は夜久さんに冗談を言ってみることにした。


「知らんヤローっていうか、チームメイトの金田一と国見なんですけどね。二人とも素敵な私の伴侶ですよ」
「ごめんなんて？？」


︙

マ、マネージャーが音駒(ヨソ)に取られた……ッ！
元々知り合いだったというか、家族もいるからか、音駒ゾーンで仲良くご飯を食べているのを見てぐぬぬと焦燥感に駆られる。ウチのマネジだぞ……！
ヤキモチを妬いていると岩ちゃんが「別にいいだろ今日一日くらい、俺らのマネジにゃ変わりねーんだからよ」と相変わらず男前なことを言っている。


「知らんヤローっていうか、チームメイトの金田一と国見なんですけどね。二人とも素敵な私の伴侶ですよ」
「ごめんなんて？？」


えっ今なんて？？
ざわっ、と比較的音駒ゾーンに近い場所に座る奴らが動揺していた。もちろん俺も。マッキー、矢巾、温田っちも。


「……花巻さん、伴侶ってどういう意味でしたっけ？？」
「……パートナーとかそんなん……人生の、ネ」
「及川つまりだ、それって婚約者ってことだよな？？ えっ俺間違ってる？ 間違っているのか俺は」
「温田っちちょっと落ち着こうか。そうつまりこのままいくと……重婚は犯罪だよ国見ちゃん金田一！！！」
「！？！？ えっ何の話ですか！？」


全く話が見えないらしい金田一はうろたえており、醤油入れを危うく落としかけるも、隣のまっつんが見事キャッチをする。国見ちゃんに至ってはこちらを窺ってはいるもののご飯を口いっぱいに詰め込んで黙っていた。お前はリスか。
　
　

31話「他人のご家庭だし」→←29話「影でどんなふうに呼ばれているかなんてわからないもんだ」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す