22話「恐怖に勝るとも劣らぬ」 ページ22
ヒタリ、ヒタリ――
夜も更け、木も鳥も、虫さえもが寝静まった頃。
もわりと湿気のこもった空気とは裏腹に、冷たい目をした男が獲物を探して廊下を闊歩していた。
(早く、早く行け……!)
階段の裏側でじっと息を押し殺すもう一人の男は、大きく脈打つ心臓の音が聞こえてしまうのではないかと危惧する程に緊張していた。
やがて足音は階段をのぼっていく。ああ、助かった。極度の緊張から解放され、脱力仕切った彼は気が付かなかったのだ。
足音が、止んでいることを。
そっと階段の裏から滑り出る。誰もいない。安心して天井を仰ぎ見た。
――階段からこちらを見下ろす、『鬼』と目があった。
︙
――ぎゃあああああああ!!!
突如合宿所内に響いた悲鳴に、私と国見、金田一はびくりと肩を震わせた。一体なんだというのだ。たかだか隠れんぼだろう。
国見は面倒くささを惜しげもなく、全面的に表情で示している。ため息をついた金田一が「矢巾さんの声だったな」と、呆れ声の割には青い顔でそう呟く。
まあ実際、ホラー感はある。節電なのか何なのか、廊下は電気もついておらず暗い。なので、隠れるところの電気がついているとすぐにバレてしまう。
そして、鬼というのが一番厄介そうな及川さんであるというところもこの隠れんぼの難点だろう。
現在、私達は鬼が出発した場所、つまり彼らの部屋の押入れに隠れている。及川さんが部屋から出ていった時点でここへ来たのだ。灯台下暗し、というので、ここはどうかと提案してみたところ採用された。
「……ところでさ」
「なんだよ」
「クソ狭くね」
「仕方ないでしょ。いいじゃん国見が一番広くスペースとってるし」
「そうだそうだ」
「お腹すいた」
「自由か」
ぐぐう、と国見のお腹の音がなる。この時間帯、いつもお菓子を食べているからなのだとか。私よりも女子力高い……と愕然としていると、誰かが部屋の扉を開いて入ってくる。
「「「!!」」」
咄嗟に口元を塞ぐ。三人揃って息を潜め、ただただ出ていくのを待つ。
――ぐうう
国見のお腹の音が鳴った。
「! 今の……」
「……っ」
横で二人が身じろぎする気配を感じたが、私は素直に諦めた。これでバレないって方がありえないわけだし。
案の定襖は開かれ、笑顔の及川さんが私達を指差す。
「はい、君ら七番目ね」
私達は顔を見合わせてため息をついたのだった。
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志織(プロフ) - ヒトさん» ホリミヤいいですよね!ハイキューを全面に押し出しつつ、ホリミヤ成分もそこはかとなく入れ込みたいと思います(笑)コメントありがとうございました! (2019年12月4日 21時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
ヒト - ホリミヤネタ最高です。 (2019年12月2日 21時) (レス) id: 3761af80f9 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 八重さん» コメントありがとうございます!ヒロインなら私も金田一かなと思いますが、国見は何となく自己主張強そうなのでああいう感じです(笑)私はギャグセンスがないのでは?と思っていたので、面白かったと言っていただけて何よりです! (2019年8月7日 16時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
八重(プロフ) - 面白すぎてずっと笑ってたら姉に(・∀・)<ウルセェェェェエエって言われましたどうしてくれるんですか?(謎) (2019年7月27日 13時) (レス) id: 9f24637045 (このIDを非表示/違反報告)
八重(プロフ) - いやぁー私思うんすけど、やっぱりヒロインは国見じゃなくて金田一だと思うんですよぉー(笑) (2019年7月27日 13時) (レス) id: 9f24637045 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:志織 | 作成日時:2018年4月7日 10時