16話「拝啓、愛しの従妹様」 ページ16
ゴールデンウィークに、合宿で宮城に行く。そう聞いた時に、俺は思わず猫又監督に聞いてしまったのだ。「青葉城西とは練習試合組まないんですか」、って。
宮城に住む従妹に、久しぶりに会えるかもなんて思ったからだ。練習試合がなきゃ合宿中に会うなんてできないだろうし、何よりアイツが楽しそうに部活の話をするもんだから、どんなチームなのだろうと少し気になった。「あちらさんにも都合があるだろうからな、返事待ちだ」という言葉を聞いて舞い上がったのは言うまでもない。
部活では上手くやれているだろうかとか、学校での交友関係はそれなりなのかとか、心配することはたくさんある。身近に研磨がいることもあってか、遠く離れた地に住む引っ込み思案な従妹のこともまた気がかりだった。
俺が小学生6年ぐらいの頃だろうか。俺は千冬にもバレーの楽しさを共有してほしくて、ルールやポジション、それ以外にも色々な知恵を彼女に授けたことがあった。ニコニコしながら聞いていたので、それなりに興味を持ってくれたのかなと一つ質問をしてみた。
『ピンサーってなーんだ』
『ああ、ピンサーね』
『なーんだ』
『ピンポイントサンダー!』
『怖いわ!!! 誰に当てる気だ!!!』
話を聞いてなかった上に、飄々と適当なことを言ってのけた。その時に「コイツにバレーの良さを知ってもらうのは無理だ」と諦めたのだった。…が、そんな俺の考えを飛び越えて、千冬はバレー部のマネージャーになったのだ。応援してる、と言った彼女は、今は俺達でない誰かを支えることに価値を見出している。
寂しくないといえば嘘にはなる。けれど、楽しいと、このチームが好きだと、そう言ったから。俺は今少しだけ安心している。空気のように扱われ、中学校生活の半分以上を楽しめなかった千冬が、仲間達と高め合えるというのなら。
それでいい。それが、いい。
「…ね、アッチで千冬の高校と試合できるといいね」
珍しく研磨がそんなことを言うものだから、堪えきれずに口角がつり上がった。きっと練習試合を断られることはないだろう。
「おう。ごみ捨て場といい千冬のチームといい、ゴールデンウィーク合宿はいい事盛り沢山になりそうだな」
899人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
志織(プロフ) - ヒトさん» ホリミヤいいですよね!ハイキューを全面に押し出しつつ、ホリミヤ成分もそこはかとなく入れ込みたいと思います(笑)コメントありがとうございました! (2019年12月4日 21時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
ヒト - ホリミヤネタ最高です。 (2019年12月2日 21時) (レス) id: 3761af80f9 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 八重さん» コメントありがとうございます!ヒロインなら私も金田一かなと思いますが、国見は何となく自己主張強そうなのでああいう感じです(笑)私はギャグセンスがないのでは?と思っていたので、面白かったと言っていただけて何よりです! (2019年8月7日 16時) (レス) id: f90efcc153 (このIDを非表示/違反報告)
八重(プロフ) - 面白すぎてずっと笑ってたら姉に(・∀・)<ウルセェェェェエエって言われましたどうしてくれるんですか?(謎) (2019年7月27日 13時) (レス) id: 9f24637045 (このIDを非表示/違反報告)
八重(プロフ) - いやぁー私思うんすけど、やっぱりヒロインは国見じゃなくて金田一だと思うんですよぉー(笑) (2019年7月27日 13時) (レス) id: 9f24637045 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:志織 | 作成日時:2018年4月7日 10時