ヒャクニ、だから、大切にしたいと思った。 ページ6
きゃっきゃと子供らしい笑顔で駆け回る綴。頭の奥底で眠っていた記憶か、はたまた強い願望か。『夢』という曖昧な空間だからこそ、うやむやになってどちらかなんて検討もつかなかった。
不意に、横を通り過ぎた親子に視線が引き寄せられる。
「京治、綴と遊んでおいで」
驚きから声が出ない。目をひん剥いてその人を見つめる。テルシマは、静かな声で名前を紡いだ。
「京子」
京子と呼ばれた女性は、綴と見間違えてしまう程にそっくりであった。
綴は自分の容姿を『唯一の形見』と言っていた。別に信じていなかった訳ではないが、今やっとその意味を理解できたような気がする。
「なっつかしいなぁ。なんつーの、あの京子独特の笑い方っていうか。綴とは全然違うから、本当、懐かしい」
そう言って微笑んだテルシマはいつものような快活な笑みではなく、年月を感じさせるような大人びたもので、見たことのない一面に少しだけ驚いた。
突然足元がぐにゃりと揺らぐ。思わず驚きの声を上げた。「お、夢が終わるな」、というテルシマの妙に楽観的な声が耳に入ってきて、そういうことかと理解した。
次の瞬間、ガンッと頭に衝撃を感じる。どうやら車窓に頭をぶつけたらしく、「大丈夫か金田一」と松川さんの笑みを含んだ声が聞こえてきた。ああ、起きたのか。
「大丈夫です……」
「やっぱ疲れてんだな。今日はゆっくりしとけよ」
「ウス」
それから後部座席を覗き込むと、テルシマが伸びをして、綴が体を起こして目を擦っている。両方とも起きたようだ。
「おはよテルシマ、綴ちゃん。金田一も今起きたところだよ」
眠たそうに目を擦ったテルシマは、「おー」と短く返事をした。綴は少し顔を顰めながら車窓越しに外を見ている。
俺にはわかる。あれは、『痛み』に耐えている顔だ。
両親の夢を、見たからだろうか。
まだ10の子供があんな顔をしている。どれだけの痛みを重ねてきたんだろうか。俺らのグループに所属している奴らは大概が『痛み』を重ねてきた奴らだ。俺もそう。けど、俺には国見がいた。
綴は、いなかった。
一時期隣にいてくれた妖怪はいたようだが、離れ離れになってしまった。隣で励ましてくれるような人間は、いなかった。
それが如何ほどのものか、俺には分からない。
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藤猫 - 終わりなんですか？！続きがすっごい気になるんです！どうか続きを書いてくださいませんか？！楽しみに待ってます！！ (2021年8月9日 14時) (
レス) id: 8264cf3ee7 (このIDを非表示/違反報告)
ノウ - 終わりですか?! 続きがすごく気になります！ (2021年6月30日 1時) (レス) id: 208a367e6d (このIDを非表示/違反報告)
織叶(プロフ) - 志織さん» そうだったんですね…！！志織さんの丁寧な描写が大好きなので、続くということが知れてほんとうにうれしいです！！いつまでも待てます！！これからもずっとずっと応援させてください！！！ (2021年1月30日 8時) (レス) id: bc2d105faa (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 織叶さん» お付き合い下さると嬉しいです。いつも私の作品を見てくださってありがとうございます！(*´∀｀*) (2021年1月30日 2時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 織叶さん» 加筆修正したお話がたまったらこちらにサイト先のリンクを貼ろうかなと考えておりますが、暫くは手直しした話を再アップという形になるかなと思います。長い間、待っていて下さってありがとうございます。先の展開へ進むのはお待たせしてしまいますが、宜しければ (2021年1月30日 2時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志織
| 作成日時：2017年8月22日 20時
