ヒャクニジュウサン、此岸と彼岸の狭間。 ページ27
火車を降りたところにはこぢんまりとした社があった。石畳にはところどころ苔が生えていたが、落ち葉はきちんと一所に纏められていたし、手水舎も綺麗に手入れをされていた。人気のない場所だが、誰かが定期的に掃除をしているようだ。
「おっ、スナ〜！ えらい早いなぁ」
「早いなぁじゃなくて、なんで人抱えてんの」
突如として現れた男は、飄々とした態度でスナに駆け寄る。その肩には確かに、ぐったりと手足を投げ出した人間が抱えられていた。
得体の知れないものを見たように、綴は顔を青くさせてスナの後ろに隠れてしまった。
「おん？」
「お前が怖いんだろ、こっち来ないで」
「酷ない！？」
うーん、と顎に手をあてた男は、パッと笑顔になると、しゃがみ込んで綴と目を合わせた。膝を曲げたことで、肩に担がれている人間の手足も地面についている。
「かわええな〜〜別嬪さんやな〜〜こっち来ぉへん？ 怖ないで、にぃにと遊ぼうや〜〜」
お菓子もあるで？ となんとか子供の好きな物で釣ろうとしているが、その姿を見たスナはフッと鼻で笑いながら綴をサッと後ろに隠した。
「何しとんじゃスナ！ 邪魔すんなや！」
「知ってる？ 人間の世界じゃそれ、危ない奴の常套句なんだよ」
「エッッ」
ギク、と大きく肩を跳ねさせた男に、綴は既視感を感じた。同時に、違和感も。
(同じなのに、この人じゃない)
選べと言ったのは。ヒトの所為には出来ないのだと説いたのは。どこか解放されたがっているようにも見えた、あの人は。全くの、別人だ。
「ッ、う……」
「！ お目覚めだけど」
「お寝坊さんやな、飛雄くんは」
微笑ましいものを見るようなその瞳に、どこか仄暗さを覚えた綴は首を傾げた。ほんの少しだけ垣間見えるあれは恐らく、罪悪感。何に対して、だろうか。ここへ連れてきたこと？ 気絶させたこと？ それとも――連れ去った理由？
「ここは……」
「俺らの社やで、飛雄くん」
「……、宮さん？ 社って……つーかお前、もしかして」
混乱した頭で影山は辺りを見回す。そして目をとめたのは、どこか見覚えのある、しかし違和感まみれの少女だった。
「綴……じゃ、ねえよな？ 妹か？」
「……お兄さん、私のこと知ってるの？」
名前、どうして知ってるの？
その質問に、影山はもしかしてと脳内に清水と谷地を思い浮かべた。此岸では起こりえないことが、彼岸ではあって当たり前のことだったりするのだと語っていたことを。
ヒャクニジュウシ、衝突。→←ヒャクニジュウニ、そこにいると、知っている。
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藤猫 - 終わりなんですか？！続きがすっごい気になるんです！どうか続きを書いてくださいませんか？！楽しみに待ってます！！ (2021年8月9日 14時) (
レス) id: 8264cf3ee7 (このIDを非表示/違反報告)
ノウ - 終わりですか?! 続きがすごく気になります！ (2021年6月30日 1時) (レス) id: 208a367e6d (このIDを非表示/違反報告)
織叶(プロフ) - 志織さん» そうだったんですね…！！志織さんの丁寧な描写が大好きなので、続くということが知れてほんとうにうれしいです！！いつまでも待てます！！これからもずっとずっと応援させてください！！！ (2021年1月30日 8時) (レス) id: bc2d105faa (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 織叶さん» お付き合い下さると嬉しいです。いつも私の作品を見てくださってありがとうございます！(*´∀｀*) (2021年1月30日 2時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 織叶さん» 加筆修正したお話がたまったらこちらにサイト先のリンクを貼ろうかなと考えておりますが、暫くは手直しした話を再アップという形になるかなと思います。長い間、待っていて下さってありがとうございます。先の展開へ進むのはお待たせしてしまいますが、宜しければ (2021年1月30日 2時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志織
| 作成日時：2017年8月22日 20時
