ヒャクジュウサン、訪問客にはご用心。 ページ17
『わり、今日だけ一人でも大丈夫か？』
誰もいない家はどこか久しく感じて、綴はくしゃりと皺が寄った毛布を抱きしめた。
テルシマもどこかへ行ってしまった。すぐ戻る、と言って、家を出て30分。渡されたお守りは首にかけた。そのお守りは護符の役割を果たすもので、家の周りに結界は張ってあるものの一応と渡されたものだった。
独りにはそれなりに慣れていたが、まだまだ子供だ。不安も寂しさもある中で、こんなに騒がしく胸が高鳴るのは初めてだった。
「夢じゃ、なかったらいいなあ。もし、私が本当に18歳の女の子だったら…」
そう、期待するだけ無駄だとわかっている。それでも一度憧れてしまえば、止めることなど出来なかった。
これが夢だったら。全部嘘だったら。きっとまた胸は痛くなってしまうのだろうけど、せめて今だけは幸せに浸っていたかった。
コンコン。
窓を叩く音が聞こえる。
敷地内には結界が張ってある。テルシマは綴に「強い結界を張ったから並大抵の奴じゃ破れない」と言ったし、お守りだってもらってる。大抵の妖怪なら近づくことはできない。
しかしその気配は人間とは言い難い。
恐る恐る閉められたカーテンを開けると、見覚えのない男が無愛想な顔でこちらを見ていた。
「こんにちは」
「……こん、にちは」
「綴、だよね。俺はスナ。
よろしく。
表情ひとつ動かさずにスナと名乗る青年はそう言った。
対して綴はどうしたものかと考えを巡らせる。食べられてしまうかもしれないという恐怖から、手が小刻みに震えている。
テルシマは強い結界を張った、と言った。それを突破できるほどという事は、彼女が太刀打ちできるような相手ではないということだ。
「……そんなに怯えないでほしいんだけど。まあ話が早くていいや。嫌なことしないから、火車に乗って」
拒否権がないと悟った綴は、何も言わずに頷いた。
ーーーーーー
一方、宮城にあるホテルにて、影山飛雄を訪ねる男があった。
「……あれ、久し振りッスね。どうやって入って来たんスか。…まあアンタなら造作もねえか。……俺に会いに？ この後暇かって？ いや、すんません、仕事があるんで。――え、ちょ、」
「あー、なんやねん飛雄くん、なんちゅー仕事してんねん。まあええか、さっさと連れてこ」
ぐったりと倒れた影山を担いだ男は、鼻歌交じりに歩き出した。
ヒャクジュウシ、特殊な彼ら。→←ヒャクジュウニ、人間も、妖怪も。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 606人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤猫 - 終わりなんですか？！続きがすっごい気になるんです！どうか続きを書いてくださいませんか？！楽しみに待ってます！！ (2021年8月9日 14時) (
レス) id: 8264cf3ee7 (このIDを非表示/違反報告)
ノウ - 終わりですか?! 続きがすごく気になります！ (2021年6月30日 1時) (レス) id: 208a367e6d (このIDを非表示/違反報告)
織叶(プロフ) - 志織さん» そうだったんですね…！！志織さんの丁寧な描写が大好きなので、続くということが知れてほんとうにうれしいです！！いつまでも待てます！！これからもずっとずっと応援させてください！！！ (2021年1月30日 8時) (レス) id: bc2d105faa (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 織叶さん» お付き合い下さると嬉しいです。いつも私の作品を見てくださってありがとうございます！(*´∀｀*) (2021年1月30日 2時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
志織(プロフ) - 織叶さん» 加筆修正したお話がたまったらこちらにサイト先のリンクを貼ろうかなと考えておりますが、暫くは手直しした話を再アップという形になるかなと思います。長い間、待っていて下さってありがとうございます。先の展開へ進むのはお待たせしてしまいますが、宜しければ (2021年1月30日 2時) (レス) id: de7effe731 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：志織
| 作成日時：2017年8月22日 20時
