猫 か ぶ り も 程 々 に 。【青葉城西】

クズ女子：５ ページ6

「ッチ、バレたかよ。アンタどこにいたんすか」
「入り口の上のとこ、登れるんだ。俺はほら、女の子に人気だから一人になれるのってここか保健室くらいだからサ」
「モテねえ女子に嫌味っすかー？」
「表向きはモテてるデショ」


笑顔の及川徹、対して眉間に皺を寄せる私。
実に不愉快な状況だ。相手の方が余裕ある、なんて。


「で、簡潔に言わせてもらいます。私が猫かぶりなの、黙っといてくださいね」
「お、やっぱりそうきたか。……ヤダ、て言ったらどうするの？」
「そーいう明らかに面倒くさそうなこと言うの、やめてくれません？」


話しながら及川は舌なめずりし、コチラに近づいてくる。
二歩ほど余裕を残して止まり、及川は十数センチ低い所にある私の目線に合わせてかがんだ。
ぐっ、と顔が近づく。
その距離約5センチ。


「…ふ、はは。本性晒したらホンット口も態度も生意気になったよね。あー、どーしようかなあ」
「バラしたら私もそれ相応の事はしますんで」
「具体例は？」
「今思いつかないんで考えときます。さよーなら及川先輩」


及川先輩の横をすり抜けて、屋上から教室に向かう。


…あー嫌だ、やな奴の本性見ちまったわ。
アレ、私じゃ敵わないくらい性格悪いんじゃないかな。
妙に色っぽい舌なめずりによく似合う捕食者のような目。


「実は女子嫌い」とか、そんな可愛いレベルじゃない。
それだけだったらどれだけ良かったことか。


(化けの皮ひっ剥(ぺ)がしたいとか、思うんじゃなかった)

　
　
　

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