家族愛か、恋愛か/The Shape ページ28
強気な女の声が徐々に震える悲鳴に変わるのは，今に始まったことではない。
Aは儀式でローリーとシェイプと一緒になった時，彼女をひどく哀れに思うようになっていた。
あの鬼はただ一人，親愛なる妹を求めて黒い影を見つめるのだ。
時々，彼に間違って執着されたことがあるが，それは彼の思い違いでありミスなのである。
彼女へのその執着の強さから，Aは自分が執拗に狙われることはないと思っていた。
だからこそわざと狙われに行ってローリーを助けた。
だからこそ，それを利用して自分だけの生還を望んだこともあった。
今では自責すらしなくなってきた。
それだけ心が麻痺するほど，A達はこの霧に長い間囚われているのだ。
発電機が残り1つ，未だ響かない3度目のピアノ。
その時，ローリーが追われ始めた事が感覚的に把握できた。
ローリーだと分かるのは，邪神の気まぐれなのだろう。
彼女なら時間を稼ぐのもうまい，ましてや相手はシェイプ。
悪いけど、そう思ったもののその恐怖がゆっくりとこちらに向かってきている事に気が付いた。
ハッと振り返れば，必死に走ってくるローリーとそれを追うシェイプが見えた。
Aにひどく近づいた時，シェイプが包丁を振り下ろすも彼女は懐に入り込みそれを躱した。
自分に当たりそうな刃に驚いたAはシェイプの後ろで歪んだ笑みを浮かべる彼女に気がつかなかった。
「いつもの、お返しよ！！」
キィンと金属の音が響き，辺りは発電機の音とマスク越しの呼吸音だけが聞こえている。
瞑っていた目を開けば，マスクの奥の青い瞳と目が合った。
シェイプはローリーに蹴られてこちら側へ倒れ，Aに覆い被さっていたのだ。
自分の両脇には包丁と彼の大きな手，逃げようにも身動きが取れない。
呆けていると，頬に柔らかい何かが触れた。
「ひっ…」
それはシェイプの，彼女の血に濡れた親指だった。
彼はゆっくりと頬を撫でAを凝視した。
死を恐れて抵抗しないのをいいことに，シェイプは気の済むまで頬を撫でていた。
不意に彼は体を起こし包丁を握り直した。
慌てて逃げようと思っても彼に腕を引かれバランスを崩した。
その一瞬，胸に鋭利な痛みを覚えた。
それを痛いと認識する前に感覚が麻痺し目の前が暗転していく。
意識を失う直前，その白の奥で目を細め穏やかな表情をする彼が見えた。
彼はまるでおやすみのキスをするように頬に口づけをした。
『おやすみなさい、また明日』
破壊/The Wraith→←All Seeing/The Wraith-2
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つぅさん(プロフ) - 柏木信子さん» 柏木さん、コメントありがとうございます！ドクターですね、いいものが浮かびましたので近いうちに上げておきます：） (2019年6月22日 23時) (
レス) id: 24afe1b8e2 (このIDを非表示/違反報告)
柏木信子(プロフ) - いきなりですみません！ドクターが一番好きなのでドクターお願いできますか？ (2019年6月22日 16時) (レス) id: 76444309d4 (このIDを非表示/違反報告)
つぅさん(プロフ) - nadesiko-nadekoさん» nadesikoさんコメントありがとうございます！どストライクだったようでとても嬉しいです。たまには両想い的悲哀もいいですよね…X3これからもよろしくお願いします。 (2018年12月24日 17時) (レス) id: 24afe1b8e2 (このIDを非表示/違反報告)
つぅさん(プロフ) - わかなさん» わかなさんありがとうございます！我ながら「これだァ！」となった一話になっております＾＾感動していただけて幸いです：） (2018年12月24日 17時) (レス) id: 24afe1b8e2 (このIDを非表示/違反報告)
nadesiko-nadeko(プロフ) - 新作がドストライク……せやな……主人公ちゃんの仲間からしたらこうなるか…素敵です、何度も読み直してしまいました…！！ (2018年12月22日 8時) (レス) id: fac8b3c77a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つぅさん | 作成日時：2018年5月17日 1時
