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『満たされないんじゃなくて、満たしてはいけないんですよ』
「…それは、自分で自分の感情を制限をしている訳ではない…と言う解釈でいいかな」
『はは、想像にお任せしますよ。言ったじゃあないですか、私にも計画があると』
「………ねぇA。…その計画、君自身も死ぬような計画じゃないだろうね」
『貴女方の計画が成功すれば私は死ぬでしょう。ですので、それは未だに不透明です』
「君の頭脳なら、もっと未来まで見ているのではと……私は思っているけどね」
ウィリアムは試すような目線でA見つめる。
Aは、入団試験から何処か喉に引っかかったような違和感を感じさせた。金属が擦り合うような不快感
唯一の友人は自分にそう語っていた。彼女自身も不明な事が多い事から、違和感はそこだろうと。勝手に
自分の気持ちに蓋をしていた。そこには無意識だろうが、友人の計画の邪魔にならないようと言う思い入れ
もあったんだろう。が、それにしてもギリギリで掴めないようなその違和感の原因を、見つけることにはな
らなかったし、彼女を遠目から見る度にその謎の違和感は増すばかりで、自分の気持ちに腹を立てるのは初
めての事だった。
「ウィリアム、惚れたんだ」
ユリウス様に相談させて貰って、すぐ様その違和感に名前がついた。
恋した。彼女に、何もかも不明でいつも貼り付けた様に笑う彼女に。でも何故か自分だけかもしれないが
寂しそうに仲間を思う優しさと、その美しさを持つ彼女に。
「(…愛するなんて…本当に初めての事だ…)」
Aは一時、笑顔を消していたがすぐ様いつも通りの笑顔を取り戻し(貼り付けて)
不格好にニコリと笑って見せた。気にするなよと言う暗示だったのかもしれない。
スーツがするりと椅子から上がり、ふわっとした茶色の髪が揺れる。Aは全てが予定通りだったようで
放棄すらウィリアムの個室の前に持ってきていた。
『楽しい機密会議でした…何れまた戦場で』
「……そうだね、君も気をつけて」
Aはさっと振り返り、ドアノブに手をつけようとしたその時だった。
風が微量だが爽やかに舞い、掴んでいたはずのドアノブは遠くに、代わりに右腕をウィリアムの手が掴んで
いた。細く、しなやかに伸びた手だが、やはり男とあって自分よりも一回り大きい。
「…やっぱり、居てくれないか」
『……何時まで』
「夜明けまで」
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グリム(プロフ) - 凄く面白いです!続きが凄く気になるので、更新をいつも楽しみにしています! (2022年11月26日 15時) (レス) id: 66f712e8a8 (このIDを非表示/違反報告)
きぬ - ヤミさんオチが良いです!!!!!!!! (2022年7月8日 22時) (レス) @page21 id: 3413745361 (このIDを非表示/違反報告)
天宮広海(プロフ) - 面白いです!続きが気になります!更新頑張ってください! (2022年3月7日 19時) (レス) id: 85bad9f447 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるく | 作成日時:2022年3月3日 3時