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クローバー王国の朝は早い。
国民の命を預けられている魔法騎士団員など特にだ。黒の暴牛が自由すぎるのかもしれない。
Aもなんだかんだで慣れてしまっていたのか、金色の皆んなはすごいなあとあくせくと働く
彼らを通りすがりに見ていく。
「これからどうするんだい?」
『知り合いに挨拶してから、アジトに帰ります。お世話になりました。ウィリアム団長』
「…うん。それじゃあまたいつか」
『…えぇ、またいつか』
しばらくお互いを見つめ合ってウィリアムが先に振り返り歩き出した。Aもそれを確認すると
黒いスーツを揺らして歩き出した。たった一夜、されど一夜だ。昨夜のことは忘れないだろう。
ウィリアムのたった一人の友人が、目的を達成するまでは。
「あっ、Aさん!」
『やぁミモザ。任務かい?』
「はい!これから、ユノさん達とキテンに向かう所ですの!Aさんは昨夜はどちらに?」
『ウィリアム団長が冷えると悪いからと客室に案内して貰ってね。そこで過ごしたよ』
「まぁ!わたくしに仰られて頂ければ、お泊めしましたのに」
『実はこれから任務が入っていてね、昨日はその下準備をしていたんだ』
ミモザはそれに「ではお気をつけて下さい」と丁寧に過ぎ去っていった。
流石王族とういうか、特別というか。ふわりと香る香水は、高級感を漂わせるには十二分な匂い。
幾度となく手入れされたようなきめ細やかな肌に、絹のように柔らかな髪には思わず目を引かれる。
『(…まぁ、天然が行き過ぎていて…見ていて面白いけどね…)』
何をしでかすか分からない人間と言うのは、Aが唯一娯楽として見ている対象だった。
アスタやミモザ、ノエルなんて特にそうだ。喜怒哀楽がはっきりと顔に出るかと思いきや、とんでもない
大技を放ったり、時には感情よりも行動が先に出てしまっていたり(特にAが羨ましがるのはこれ)
そんな心読みが難しい人間が何よりもAの知的好奇心をくすぐるのだ。
「…お前は…」
『ユノ君、昨日ぶり。朝から特訓とは精が出るね』
「よく特訓して来たって分かったな」
『なに、君の急いで着替えたような襟を見て、後は闘気に燃えるその魔を見れば直ぐにわかる』
「……そうか。…Aと言ったよな。お前は何故魔法騎士団に来た」
『前から聞きたかったんだろう?…そうだね、此処はあえて、
今は秘密さ』
ユノの唇に人差し指を当て、Aはひらひらと歩いていった。
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グリム(プロフ) - 凄く面白いです!続きが凄く気になるので、更新をいつも楽しみにしています! (2022年11月26日 15時) (レス) id: 66f712e8a8 (このIDを非表示/違反報告)
きぬ - ヤミさんオチが良いです!!!!!!!! (2022年7月8日 22時) (レス) @page21 id: 3413745361 (このIDを非表示/違反報告)
天宮広海(プロフ) - 面白いです!続きが気になります!更新頑張ってください! (2022年3月7日 19時) (レス) id: 85bad9f447 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるく | 作成日時:2022年3月3日 3時