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煌びやかに光るのは、シャンパンのタワー。
演舞曲が生演奏で流れ、それに酔うように男女らがひらひらと踊る。まるで極楽浄土だ。
大きな広間の中央に目立つのは、この国において最高権力を持つ男である。
「ユリウス様。如何でしょう、一曲お相手願いませんでしょうか」
「……君は」
「えぇ、お久しぶりですね。国内報道議員副長エクリッシ・ロベールでございます。
馬鹿馬鹿しいお祭り騒ぎの中、申し訳ございませんが、お仕事ですよ」
「…報告は来週で良かったんだけれど、もしかして急用かな?」
「意見具申失礼します。魔法帝、時間がございません。さ、お手をお取り下さい」
白い手袋をはめた彼女、エクリッシ・ロベールは上級貴族出身にも関わらず魔力操作が不得意であった。
が、器量の良さは天下一品で、密かにユリウスの情報収集の中枢人物となっていた。美人ではあったが
生憎、その頃のユリウスは彼女の腕しか見ていなかった為、お互い利益のみを見た関係が出来上がっていた
今になっては、すれ違ったとしても話すこともない。
そんな彼女がドレスアップまでしてやって来たのは、おそらくかなり度を越した緊急事態なのだ。
「…白夜の魔眼が動き出しました」
「場所は」
「魔力を辿りましたが、魔女の森を越えてから完全に隠蔽されているので仮定となりますが、恐らく…」
「分かった。なるべく大魔法騎士を派遣しよう。あぁ…そうだそうだ。Aについてはどうかな?」
「……謎ですね。非論理的に見えて合理的。裏か表か判断の難しい、魔力操作。それに加えて
あの鬼才並みの頭脳。…魔法帝の席を奪われるのも時間の問題ですよ」
「君はAになっても、ついていくだろうね」
「えぇ、私は私の追い求める真相を掴むまで、誰かの下で暗躍するのが目的ですから。貴方でなくとも。
しかし、彼女の目は、なんと言うか……」
「…あぁ、生きていないようだっただろう?けれどね…不器用な優しさも、ちゃんとあの子にはある。
そこが良いんだ。それに‥‥私は年甲斐もなく惚れ込んだんだ」
エクリッシは初めて見る、上司の顔に戸惑いを隠すので必死だった。
エクリッシがユリウスの下に着こうと決めたのは、彼の夢に対する熱き欲望を認めたからだ。
成果や評価、恋などよりも勝る燃え盛りその欲望を持つ彼ならば、恋に盲目などせず達成すると。
一見へらりとするが中は冷徹な彼に。求めていたのだ。そう言う理想の上司を。彼に。
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グリム(プロフ) - 凄く面白いです!続きが凄く気になるので、更新をいつも楽しみにしています! (2022年11月26日 15時) (レス) id: 66f712e8a8 (このIDを非表示/違反報告)
きぬ - ヤミさんオチが良いです!!!!!!!! (2022年7月8日 22時) (レス) @page21 id: 3413745361 (このIDを非表示/違反報告)
天宮広海(プロフ) - 面白いです!続きが気になります!更新頑張ってください! (2022年3月7日 19時) (レス) id: 85bad9f447 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるく | 作成日時:2022年3月3日 3時