検索窓
今日:11 hit、昨日:3 hit、合計:33,555 hit

ページ47





久方ぶりであった。あの変わり者だが最強だと崇められたユリウスの腕に

ぞわぞわと、つま先から頭のてっぺんまで鳥肌がたったのは。

むさ苦しい、爪を焼いたあとのような生ぐるしい匂いが立ち込める。そして

その渦にいるのは、紛れもなく今、自分を見下している彼女である。

「そうですか、私を救おうとしてるんですね」と無駄を訴える目に、これ一点の光が見えない。

ある方が見てみたいぐらいだが。


「………Aちゃん、僕が必ず……っ!!」

『(……何かが)』

「(……来る)」


ユリウスとAは、突如に感じた、その巨大に膨れた魔力を感知する。

お互い話している場合ではないと悟ったようで、攻撃態勢を構える。Aはどこかしら

安心しているようにも見えた。話に無理やりにでも区切りがついた気分だったから。


そして、眩い光が、石版の頭上に浮かび上がり、二人の目を覆う。

あまりの光沢の強さに、二人は腕で目を隠すように動く。


「………やられたね」

『でも二人は逃がしませんでした』

「……助かったよ、ありがとう」

『わあ、びっくり。謝罪のつもりでしょうか』

「さあね、私にも自由の一つや二つ、あってもいいと思うんだけど」

『選択の自由は、危険の香りがしますけどね。縛られていた方が良い人だってやはりいます。

___私みたいな人とかね。』



ユリウスもなかなか負けていないようで、Aの心の内を探ろうと必死だ。

Aは見せないように隠している。傍から見ればスパイとの会話だと思ってしまう。

それくらい、熱中した話し合いなのだ。


「さて、帰ろうか。どうせ飛べるんだろう?」

『あらら、バレてましたか』

「バレバレだよ。さっきここに数十人飛ばした魔力は君のものだ」

『せっかく、貴方に頼ろうと思っていたんですけどね。ざんねんざんねん」

「…………」


ユリウスは、嫌味でAに返したつもりだったが、とっくにAは

ユリウスの考え事などわかっていたようだ。それこそ白衣装の魔道士を飛ばしてから

かもしれない。結局Aにのせられて、何時ものように謎の理論を会話する。

展開がややこしいが、楽しくない訳では無いので、嫌ってはいない。ただ苦手ではあった。

いつも自分が押し黙って終わってしまうからだ。


「Aちゃん、いや、A」

『なんでしょうか、魔法帝』

「呼び捨てでも構わないよね?」

「はは、どうぞどうぞ」


乾いた笑い声が、地下に響いた。



・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 7.4/10 (69 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
91人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みるく | 作成日時:2022年1月5日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。