情動の九葉 di-2 (ページ42)

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「その程度の魔法、我が雨は貫くぞ」

「からのぉ～。裏魔導具特性＋α…吸収！」

これまたでっかい注射器を取り出した女は、それを注入するように

ゲル魔法に刺した。するとその言葉通り、団長クラスの魔法が吸収されてしまう。

水銀は、かなり用途の多い魔法であるから扱いやすいのは特徴だが

同時に溶けやすいので相性の悪いものが多いというのもまた特徴である。

「もぉ～らいっ！」

「あ、アスター！」

みんな、見た事もない魔導具に気を取られ、ボロボロでもう動けそうにない

アスタを捕らえようとしていた事に、ぼーっと突っ立つA以外気付かなかった。

「アスタ！！」

「アスタさん！！」

「っ゛…！！A！A、お願い助けて！！」

「そうですわ！！Aさんなら！」

「A！私からも頼む！」

クラウスや、ミモザ、ノエルの必死の助けと泣きそうな顔に

他の団員達は一斉にAの方へと顔を向ける。

Aは相も変わらず意味不明な笑みを浮かべて、その腕の包帯は取れかけていた。

Aは仕方がないか、と目の前に立ちはだかる大きなゲル魔法の化け物に

近づき、手を重ねたり揉んだりと、不思議な動きを繰り返し、最終的に

人差し指と中指のみを天空に向け、それをしゅっと裂くように下に落とした。

『…… 大徳世尊よ、其の罪福に隨つて之を処断す。

空閑操作魔法、広厳城の響き』

白衣装の魔道士達も、これはまずいと青ざめるも

すぐにその顔の色は血の気が引くどころか、土色へとみるみるうちに変化していくことになる。

というのも、包帯少女の周りに円形の炎を纏ったでかい刃が何百個も並べられていたのだ。

白・青･赤・黄・黒の五色の炎がそこには見えた。

『……返してもらうよ』

＿＿＿どうやら彼らは友達ごっこがしたいみたいだから。

その言葉の真相が、後ろで呆気にとられて動けない彼らには届かなかった。

いや、点にも届くようなおぞましい気持ちで、届かせなかった。

悪霊にでも取り憑かれたように、その場にいた魔導師達は汗が一気に引く。

喉の奥が震えるように痛く、鳥肌が止まらない。

ドゴンっと、落雷の数十倍も恐ろしい音がした後、白衣装の者達は

ほぼ全員消えていた。いや、勝手に消した。

アスタは、その場に取り残されたが、引き換えにAがその場から消えていた。

「えっ、A…？」

「何が起こったのだ、今……」

「あの少女の魔法、なのか？」

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