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「王族に逆らいし下民、どう裁いてやろうか…」
アスタの小鳥の脳でも、これはまずいと感知したようで
ジリジリと足を後ろへと動かそうとするが、目の前の男がそれを許さない。
流石のミモザやクラウスも、ノゼルに刃向かう考えなどさらさらない。
どうしよう、どうしよう、と周りも焦り始めたその時。
『あと五秒です』
ぽつんと、聞き馴染みのあるような声を出したのはAだった。
団長や副団長達はそのふしぎな格好で記憶の隅に残っていたので
「あの黒いの…」とAを見つめるが、それ以外の団員は
場違いな薄汚いネズミとしか認識されていなかったので、
睨みつけるように鋭い目線がちりばめられた。
「…貴様、この場に及んで私に反論するか」
『まあ、あと五秒で良いので待ってくださいよ』
他の団員達は、五秒?と疑問を募らせ、あのノゼル団長の前でも
ものともしない彼女を見つめる。一方フエゴレオンは
わかっているのか、緊張した様子で目尻を固くする。
そして、それぞれが5、4、3、2、1と数を数えてゼロと唱えたその時。
「た、大変です…!!!」
一気にして、5秒という短い間で団員達の血の気が引いていく。
何故わかったのかその言葉と、ドアをこじ開けた魔道士の言葉で
頭がいっぱいだ。
「王都が……王都が襲撃されています…!!」
まさか、と団員達は冷静を取り戻そうと行動を移す。
さすがはこの国でもトップクラスの試験に合格してきたエリート達だ。
一般庶民ならば、この場ではどよめきと不安で頭がいっぱいになるだろうが
すぐさま対応を急いでいる。
「岩石創成魔法 世界を語る模型岩」
金色の夜明けのハモンと言う男が魔導書を構えた。
そして王貴界の立体模型を創り出す。
どうやら現地の人間の声や魔力量まで分かり、魔をこの地域一帯に張り巡らせ
同時にそれを可視化しているようだ。
「これ程の魔力量の群勢が我々に気付かれず五ヶ所同時に…」
「…どうやら相当な空間魔法の使い手によって一瞬の内に現れたようだな」
然し乍ら、王貴界は護衛の魔道士によって守られており、
交代制で常に魔法障壁が張られていて、侵入は不可能。
だとすればその魔法障壁の仕組みを分析して破ったのか、賄賂を渡したのか。
どちらにせよ被害者の行先にいるのは住民たちであることに間違いはなかった。
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作者名:みるく | 作成日時:2022年1月5日 18時