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身体中が悲鳴をあげるように、帝都の中央に放たれた虎のように危険な
厚かましい匂いが全身に立ち込めた。吐き気がする。
Aは思わず唇を噛み締め、見知らずのその光景と意志達に唾を吐いた。
此処には“ 善人 ”所か英雄しか集められていない。
歩くだけで、拒否反応が出てしまう。暖かいお日様を見ているようで。
来るな、近寄るな、と思わず全員殺してしまいたかった。
こうもなるのは、Aの本質があちら側(裏の世界)だと納得していたからである。
人殺しの才能があると知っているからだ。あぁ、恐ろしや…。あな恐ろしや…。
〔…可哀想なA。わんなの胸ならば貸してやるぞ〕
『……………』
Aにしか見えない、その鬼もどきの幽霊は、相も変わらず
Aに引っ付いてくるようにふわふわと浮いている。
ここでその提案に答えてしまっては、周りに怪しまれるので、Aは
特に反応せずに前へと歩く。
じっと、燃え盛らんばかりの焦がすような炎の目線は
独りの憂鬱そうな少女しか捉えていなかった。
「(まさか、本当に来るとは……)」
__「本日の戦功叙勲式は、私も後から参加します。
その後、王都襲撃が起こるので…その際には手順通りに」
包帯の少女は、あの時確かにそう言った。
確証が無いわけではないのだが、怪しむ気持ちが優先的に出てしまっていた。
入団したての新入団員が来るわけもないと思っていたが
本当に予言通りに魔法帝と共に来てしまったと、フエゴレオンは
内心溜息を吐いた。
「…待たせて悪かったね。…では、戦功叙勲式を始めよう!」
Aは、早く出て行きたいと願いながらも
人跨ぎ程前の彼らの考えている事を、手や動作や癖などから暴いていく。
レオポルドと呼ばれた彼は、フエゴレオンの弟であるから
兄への憧れが強いのだろうだとか、銀翼の二人については
見た目通り過ぎて言うことすらない。
「…みんな大儀だったね。
さて、これから簡単な席を設けてるから楽しんでいってくれ。
……あ、そうそう!今日は特別ゲストも呼んであるから大いに交流してくれ給えよ!」
視線が体を引き裂きそうで、A達は
帰りたいと、初めて6人揃って意見があった。
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作者名:みるく | 作成日時:2022年1月5日 18時