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今日も今日とて、燃える獅子は相も変わらず元気いっぱいだ。
橙色の髪に、三つ編みをゆらゆら揺らし、けれど顔は熱血そのままで。
ここは、魔法騎士団、紅蓮の獅子王団の本拠地である。
「兄上−!!!」
「レオ、走るんじゃない」
「はい!!」
すんなりと認めてしまうものだから、兄であるフエゴレオンも笑うしか無かった。
フエゴレオンと言えば人望も熱く、ファンクラブも一位を争う程多い。
しかも性格故なのか努力家で、実力主義であるから
特にこれといって階級的差別もしない。正しく紅蓮の獅子王に当て嵌るいい人である。
王族の血筋だからあまり庶民の暮らしを知らないのが残念な点ではあるが。
「それで、どうしたのだレオよ」
「あと少しで戦功叙勲式なので!それまで稽古を付けて貰えないかと!」
「勿論いいぞ。だが、私は少々報告書を書いてからゆく」
「分かりました!!」
レオは絞り出したように元気ハツラツな声でそう放ち、すぐさま後ろを振り向き走っていった。
先程の注意は頭から抜け出たようで、今の頭の中は兄上と修行!しかない。
フエゴレオンは全く…と言いつつ、豪華な椅子に座り、報告書へと手を伸ばした。
が、その資料はすぐに風で飛んでいくことになる。
『やあ』
「………?!」
あまりに急な登場に、あのフエゴレオンでさえしどろもどろする。
王族で地位も高い彼であるから、侵入者など門番や団員、召使いが退治
してくれる。だがこの彼女の場合はそんな奴らじゃ雑草どころか微生物程度にしか
見えていないので、全て回括ってきた。
「…誰だ!…ってお前は…」
『記憶力は悪くないね。…私は黒の暴牛のAです。
まあ、緊急事態なんで侵入罪とかはやめてください』
侵入罪でもいいけどね、なんて抜かしながら近づいてくるのは
この前の入団試験で弱い魔力なのに黒の暴牛に入団したあの黒い奴であった。
名前すら知らないし、会うこともないだろうと思っていたが、急な登場で
再度会うこととなった。
「……緊急事態。要件はなんだ」
『ん−…唐突に言うと、君が死んじゃう』
「わ、私が死ぬ?だと?!」
『うん、死んじゃうから耳かっぽじって聞いて』
人差し指で耳を指して冗談じみて言う彼女。距離は近くなり羽
もはや恋人のような近さにまで達した所で、彼女はひっそりと言葉を放った。
その柔らかさに少し安心してしまったのはここだけの話だ。
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作者名:みるく | 作成日時:2022年1月5日 18時