歪な愛 20 ページ21
朝、最早習慣化とした朝食を作っていると、冷蔵庫の卵が無いことに気づいた
「あ、ないや」
見てみれば、牛乳も、チーズも、ハムも、殆ど無い
「困ったなぁ…」
頭を悩ませていると、支度をし終わった中也が姿を表した
「どうしたんだよ」
後ろから声をかけられ、驚きつつも答える
「えっと…、卵とか、無くって」
中也はAの言葉を聞くと、少し思案顔をした後、外套から財布を出すと、Aに幾らかの金を差し出した
「え?」
意味がわからず、それを見つめるAに、中也は言う
「買い物行ってきてくれるか?あ、それと」
中也は思い出したように言うと、またごそごそと外套を探り、今度はピンク色の携帯電話を取り出した
「連絡つかねぇと不便だし…ほらよ」
次いで、携帯電話を差し出され、Aは更に驚き、中也の顔を見上げた
「私…外に出ていいの?」
恐る恐る問うと、中也は少し目を見開いた後納得した様に「そういうことかよ」
「俺は別にお前を閉じ込めてェわけじゃねェんだぜ?お前が出掛けて…ちゃんと俺の元に帰ってきてくれれば、それで良いんだ」
中也は優しく笑うと、Aに改めて2つを差し出した
Aはゆっくりと、それを手にし、中也を見つめた
細められた青い瞳と、視線が重なる
「買い物、頼むぜ」
革手袋の大きな手で、壊れ物を扱うかのように撫でられると、心の中に少しだけ浮かんだ「逃げよう」はすっかり打ち消されたのだった
思えば、中也と服を買いに行って以来、外に出ていなかった
中也に約束されたのは、2つ
1つ、出掛ける時は中也に言う事
2つ、必ず中也の元へ帰ってくるという事
この2つを守れば、Aは出掛けていいと中也に言われた
エレベーターを降りながら、Aはふと思う
私が帰ってこなかったら、中也はどんな反応をするんだろう?
正直、何時も余裕たっぷりで意地悪な中也の焦る顔が見たかった
「逃げたら…どれだけ心配してくれるのかな」
もう、純粋に"逃げたい"なんていう気持ちは失ってしまった
だって、帰るところも、中也から離れるつもりも、無いのだから
「私、もう中也がいないと」
"駄目なんだ"
Aはその言葉を飲み込むと、エレベーターを降り、エントランスを出て、ヨコハマの街へと足を進めた
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ぷひぷに - とっても面白かったです!続き楽しみにしてます! (2022年1月27日 22時) (レス) id: 512a7a8549 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - ともさん» コメントありがとうございます!とっても楽しんで読んで頂いたようで、とても嬉しく思います!なるほど、そうなのですね!中也さん格好ですよね!私も大好きです(笑)(*´∀`*)そこまで言って頂けるなんて…!恐縮です!ありがとうございます!続編更新頑張ります! (2017年9月21日 23時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - もう本当に最高でした最高でした最高でしたぁぁぁー私の名前がともなので、途中にともかともをとも…?ってなって面白かったですww中也さん大好きな私にとってはASさんが神にしか見えません…続編見に行ってきます!!!! (2017年9月21日 23時) (レス) id: 63685abaf6 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 中一厨二さん» コメントありがとうございます!中也さんの愛情は無限大です(´∀`*)お褒めのお言葉光栄です!すぐに直します!ご指摘ありがとうございました! (2017年8月7日 17時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
中一厨二 - 面白いです!歪な、確かな中也の愛を感じました!(語彙力!)それと29話の赤い花の漢字が違うと思うのですが…。出来れば確認していただければと思います! (2017年8月7日 0時) (レス) id: 57ede5ac54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:AS | 作成日時:2017年7月5日 19時