愛の数だけコウフクな嘘を【中原中也】【太宰治】

コウフクな嘘 8 ページ9

(中原さんに太宰とメェルしてるなんてバレたら大変な事になる…！)


ヒヤヒヤするAに、中也は軽く謝る


「おお、悪かったな」


そうして椅子に腰掛けると頬を書きながら口を開いた


「そういや、その…逢引、今度の日曜でいいか？」


その中也の言葉に思い切り頷きかけたAだったが…太宰とメェル文を思い出す


【日にちは今度の日曜】


サーっと顔から血の気が引いていくのが自分でもわかった


「な、中原さん、その日じゃなきゃ駄目ですか？」


焦るAに中也は首を傾げる


「なんだ、都合が悪ィのか」


「はい、ちょっと…」


Aは中也から目を逸らした


まさか、日にちが被るとは


(太宰に日にちを変えてもらおう)と試行錯誤するAに、中也は笑った


「…なら仕方ねェな、今度の火曜でどうだ？」


中也の言葉に、Aは眉を下げる


「中原さん…ごめんなさい、ありがとうございます」


ペコリ、頭を下げると、その頭を優しく撫でられた


「いいって、それより、何時もありがとな」


中也の視線は作り掛けの書類に行っていた


「何時もお前は俺が支持する前にやってくれる…本当にお前が部下で良かったぜ」


澄んだ、何処までも澄んだ蒼い瞳を細めて、中也はAに微笑みを向ける


その微笑みに、ズキン…と胸が痛む


(私は…スパイのためにマフィアにいたはずなのに)


(いつの間にか、貴方の傍にいる為に部下にまでになっていた)


(それを知ったら、貴方はなんて言いますか？)


切なくなって、少し泣きそうになって、でも涙を引っ込めて、笑う


そうだ、笑え、バレないように、気づかれないように


「私も…中原さんの部下になれて、良かったです」


でも、中原さん、この言葉だけは…嘘じゃありません

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