コウフクな嘘 24 ページ25
答えは出た
すっかりすっからかんになった机に、少し涙が滲んだ
隣の中也の机は、きちんと整理されていて、何時も通りだった
「嗚呼…、寂しいな、なんて」
ポケットからチョコレェトを1粒取り出して、中原さんの机の上に置いて
くすりと、小さく自嘲的に笑って、執務室を去っていった
中原さんが来る前に
朝、定刻に中原中也は何時ものように出勤し、何時もの様に執務室に入りー…
非日常的な"その現実"を突きつけられた
自分の隣に並んでいた机はもうすっからかんだった
「A…、嘘だろ」
そこで、中也は気づいた
配置換えなど、自分に都合のいいように解釈していた数日前の自分を殴りたくなる衝動に駆られた
ー…七瀬Aは、中也に何も告げず、マフィアを去ってしまったのだ
慌てて何か置き手紙がないか自分の机の上を見るとー…
1粒のチョコレェトが、ポツンと、取り残されていた
それは、かつてAが微笑んで中也に差し出したものと、同じもので
それを見た途端、中也の中で何かが弾けた
「A…っ!!」
名前を呼ばずには、いても立っても、居られなくて
中也は鞄を放り投げて執務室を後にした
朝のヨコハマの街を、一人歩く
ずっと嘘を付き続けるのが苦しくて、辞めたいなんて思っていたマフィアのスパイが辞められたのに、どうしても、心は晴れてはくれなかった
(もう、私は嘘を付かなくていいのに)
嘘が"事実"のままで終わってしまった事が、何より悲しかった
(でも、これで中原さんは悲しまない)
私の嘘は、貴方にとって幸福になりましたか?
心の中で問いかけて、ふと目を瞑った
「…見つけた」
突然、真上から声
…真上から、声?
しかも、その声は、酷く聞き覚えがあって、でも、もう屹度聞くことは無いはずのもので
なのに、上から聞こえてくる
「手前に言いたい事がいっぱいあるんだよ
ー…A」
勢いよく見上げると、瞳から涙が2、3粒光って零れて
建物の真上から、中原中也が此方を見つめていた
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AS(プロフ) - ピロウさん» うわわ、ありがとうございます…!ピロウさんにそう言って頂けるなんて、夢にも思っていませんでした…!もう双黒が最高なので、愛読させて頂いています!!此方こそ恐れ多いです…!もう歓喜です(泣)再びのコメント、本当に嬉しかったです!これからも頑張ります! (2017年11月10日 23時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ピロウ(プロフ) - 完結おめでとうございます…!お疲れ様です!最後の一文まで素敵なお話で、流石ASさんだな、と感動いたしました…。て、ていうか愛読して下さっていたんですか!?恐れ多いです…!これからもお身体に気をつけて頑張ってください! (2017年11月10日 21時) (レス) id: aafbc19e8e (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - もえさん» コメントありがとうございます!感動して頂いて嬉しいです(*´v`)矢っ張りハッピーエンドが一番ですね!ご指摘ありがとうございます!すぐに直します!これからも宜しくお願いします! (2017年11月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
もえ(プロフ) - ASさんの作品は、何時も感動なお話ばかりです。二人が結ばれてよかったです……★P.S.28話の次が30に成ってます……|ω・`)チラ (2017年11月5日 17時) (レス) id: d821d2b418 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - ピロウさん» コメントありがとうございます!うわぁあ、ピロウさんですか!中也さんのヤンデレと双黒の短編集を愛読していました!私も小説を読んで本当にキュンキュンしました!沢山のお言葉、とても嬉しいです(*´∀`*)何時も素敵な作品をありがとうございます!頑張ります! (2017年8月23日 7時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:AS | 作成日時:2017年6月27日 16時