コウフクな嘘 16 ページ17
なんで、なんでこんな事になっているんだろう
真正面には、ヨコハマの夜景を眺める中也の姿
ゆらゆら、微かに揺れるゴンドラ、バクバクと鳴り止まない胸の高鳴りに、Aはぎゅっと手を握った
ー…そう、Aと中也は観覧車に乗っていた
切っ掛けは、小一時間前のことー…
「中原さんは、行きたい所、ないんですか?」
日は西に傾き、ヨコハマの街がすっかり茜色に染まる頃、美術館の前のベンチで二人は休んでいた
Aの問に、中也は目をぱちくりさせてから笑いかけた
「いや…、だって今日は手前への礼だし」
らしくない控えめな態度の中也に、Aは腰に手を当てて告げる
「私が、そうしたいんです」
そんなAに中也はふっ…と笑うと、Aの頭に手をぽんぽんと置いた
「ありがとよ…じゃあ、お言葉に甘えて」
中也はベンチから立ち上がると、茜色に染まる空を指さして
「観覧車、乗ろうぜ」
(まさか、観覧車に乗りたかったなんて…)
着いた頃には日が沈み、夜景を見る為に並ぶ人達を気にもせず、マフィア幹部殿は話を付けて観覧車を貸し切りにしてしまった
チラリと中也を見ると、中也は外の夜景をぼんやりと眺めていた
その端正な横顔と、夜景を見つめる蒼い瞳に、Aの胸はとくとくと波打ち出す
(格好、いいなぁ…)
中也に見蕩れていると、ふと森の言葉が頭を過ぎった
『ハメを外さないように頼むよ』
(嗚呼…どうして忘れてたんだろう、私)
楽しくて忘れていたけれど、私は異能特務課から派遣された、マフィアへのスパイ
ー…敵である想い人に嘘をつき続ける、哀れな人間
変えようのない事実を改めて思い知らされ、下を俯く
「ー…え」
と、足元は真っ暗
というより、硝子張りになっており、足元には
ヨコハマの夜景が映っていた
「ひっ…、ひゃあぁあっ!?」
あまりの衝撃に叫ぶと、中也は驚いたように此方を向いた
「なんだ、どうした!?」
「な、中原さ、し、下が」
涙目になりながら下を指差すと、中也は下を向いて「嗚呼」
「このゴンドラ、シースルーゴンドラっつーレアなゴンドラなんだけど…怖いか?」
無言で何度も頷くと、中也は片手で顔を覆った
「マジか…、ごめんな、聞けばよかったな、つか、乗る時気が付かなかったのか!?」
(貴方と乗るから緊張してたんです…!)
なんて言葉を飲み込んで、弱々しく返事をする
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AS(プロフ) - ピロウさん» うわわ、ありがとうございます…!ピロウさんにそう言って頂けるなんて、夢にも思っていませんでした…!もう双黒が最高なので、愛読させて頂いています!!此方こそ恐れ多いです…!もう歓喜です(泣)再びのコメント、本当に嬉しかったです!これからも頑張ります! (2017年11月10日 23時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ピロウ(プロフ) - 完結おめでとうございます…!お疲れ様です!最後の一文まで素敵なお話で、流石ASさんだな、と感動いたしました…。て、ていうか愛読して下さっていたんですか!?恐れ多いです…!これからもお身体に気をつけて頑張ってください! (2017年11月10日 21時) (レス) id: aafbc19e8e (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - もえさん» コメントありがとうございます!感動して頂いて嬉しいです(*´v`)矢っ張りハッピーエンドが一番ですね!ご指摘ありがとうございます!すぐに直します!これからも宜しくお願いします! (2017年11月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
もえ(プロフ) - ASさんの作品は、何時も感動なお話ばかりです。二人が結ばれてよかったです……★P.S.28話の次が30に成ってます……|ω・`)チラ (2017年11月5日 17時) (レス) id: d821d2b418 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - ピロウさん» コメントありがとうございます!うわぁあ、ピロウさんですか!中也さんのヤンデレと双黒の短編集を愛読していました!私も小説を読んで本当にキュンキュンしました!沢山のお言葉、とても嬉しいです(*´∀`*)何時も素敵な作品をありがとうございます!頑張ります! (2017年8月23日 7時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:AS | 作成日時:2017年6月27日 16時