伝え愛 5 ページ6
中也は先程のAの言葉を思い出していた
(人助けで川に落ちた、か……)
嘘を言っている訳ではなさそうなのだが、溺れる人間などそうそういないし、それに、どうもあの泳ぐ視線が気になった
そこで中也が思い描くのは、あの、憎き双黒の片割れ、太宰治
幼き頃から何度か入水する太宰を助けたことがあったが、まさか太宰を助けたのではないか、と
「……だとしたら、相当めんどくせェな」
(太宰に何か吹き込まれたのか)
(それとも、太宰に何かされたのか)
だが、こういう時の中也の悪い勘は、高確率であたる
中也はどこかモヤモヤした気持ちを胸に抱きながら眠りについた
寝癖のついた髪の毛を触りながら、中也はリビングへ向かう
ドアを開くと、いつもと同じ、明るい笑顔のAの姿があり、安堵する
「おはよう、中也」
「おう、おはよ」
寝ぼけ眼を何度か瞬きを繰り返したところで、中也は違和感に気づく
中也は目をこすってじっとAを見つめる
?マークを浮かべるAの艶やかな長い黒髪に常に飾られている筈の、過去に中也がプレゼントしたあの、髪飾りがないのだ
「A……、髪飾りどうしたんだ?」
中也が問うと、Aは顔を一気に青ざめさせた
中也の言葉に、Aは髪の毛を触る
そこに飾られているはずの髪飾りはなく、手は髪の毛に触れる
(なんで、なんで……?!)
軽くパニックに陥りながらも、Aは冷静に考える
(昨日は……大学に行って、太宰を助けて……)
゙川に飛び込んだ゙ということを考えると
(若しかして、川の中に……?!)
飛び込んだ勢いで外れ、川の底にあるのかもしれない
迂闊だった
Aとした事が、昨日は太宰にあった衝撃が大きすぎた為、あれから気が付かなかったのだ
(どうしよう……)
Aは焦る、あれは、中也に初めて貰った、Aの一番の宝物
それが無くなるなんて、それを無くしてしまうなんて、Aには身を裂かれる思いだ
(中也に無くしたなんて言えない……!)
Aは咄嗟にそう判断し、精一杯笑ってみせる
「やだ、昨日大学に置いてきちゃったみたい!」
あはは、と頭に手をやって言うと、中也は安心したように笑った
「そうか、心配しちまった!ならいいんだ」
中也が洗面所へ向かったのをみて、Aはひとまずホッと息を吐いた
幸い、今日の講義は少ない
(川に行って、捜さなくちゃ……!)
Aは1人、心の中でそう決意したのだった
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みく - こんなに心をうごかされた作品は初めてです!感動しました!もう最高すぎて苦しい!!!!! (2019年2月15日 21時) (レス) id: 672796e13d (このIDを非表示/違反報告)
みりあ - 素晴らしい作品でした! (2019年2月15日 21時) (レス) id: 672796e13d (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - ゆづきさん» うわわ、とっても嬉しいです!コメントありがとうございます(*´v`)亀更新ですがお付き合いいただければ幸いです! (2017年6月10日 23時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - とても、面白かったし感動しました! (2017年6月10日 22時) (レス) id: 029d1006b7 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 花さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます(*´∀`*)なかなか更新出来ずすみません…(´・ω・`)なるべく更新するように頑張ります! (2017年6月5日 7時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:AS | 作成日時:2017年4月24日 17時