おいでませ、温泉旅行 4 ページ37
温泉街での別行動も終わり、名残惜しく思いながらも男女は別々に別れた
────そう、夕飯前の風呂である
「わぁあぁっ!凄い!凄いわ!」
露天風呂を見るなり駆け出すエリスを見て、尾崎はクスクスと笑う
「これこれ、走って怪我をされては困るのぉ」
「危ないですよ、エリス嬢!」
先に風呂に浸かったエリスに続けて、二人も露天風呂に身を沈めた
「あー…、いい夢」
目を閉じて至福の表情を浮かべるAを見て、尾崎は問いかける
「のぅ、A」
「はい?」
「中也とは良好かの?」
思わぬ質問に、一気に温泉の熱さが顔に昇る────見てみれば、尾崎はニコニコと微笑んでいた
「…はい、大変良好でございます」
気恥ずかしげに顔を覆うAに、尾崎は「初いのぉ」と目を細めて笑う
ひとしきり笑い終えると、尾崎は星の瞬く空を眺めてぽつり、話し出した
「中也は…、本当に昔からお主を想っている
少し不器用で、まだまだ拙い男じゃが、きっとAを幸せにしてくれるであろうぞ」
星を見ていた紅色の瞳が此方を向く────その瞳は、中也を家族として見る、優しい姉の瞳をしていた
「────はい」
なんだか、胸がじんわりと熱くなって
はにかんで頷くと、尾崎は満足したように再度微笑んだ
「二人の将来が楽しみじゃ」
────その後、1人で露天風呂を探検していたエリスが帰ってくるのは、また別の話
「いやぁ…いい湯だねぇ、中也くん」
一方、男湯では
森と中也が露天風呂に浸かっていた
すっかり日々の血腥い世界を離れ、のほほんと疲労を癒す森とは反対に、中也はなんだか晴れない面持ちをしている
遠くか、近くか、虫の音が聞こえる中、中也が思い口を開いた
「…首領は、女性とお付き合いされたことはありますか?」
唐突な質問に、森はふと考える
「まぁ…ひぃふぅみぃ、うん、あるねぇ、Aくんかな?」
行成恋人の名前を出され、中也はハッと驚いた後、困った様に笑った
「…なんでもお見通しですね」
「だってそれ以外に君が悩むなんて有り得ないさ」
ふふん、と心做しか胸を張る森に、中也は胸の思いをさらけ出す
「…いまいち、Aとの距離が掴めないんです
大切にしたい、何より、嫌な思いはさせたくありませんし
何処までも近づいていいか、触れていいか、わからないんです」
蒼色の瞳を揺らして相談する姿は、唯の悩める青年の姿だった
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みく - こんなに心をうごかされた作品は初めてです!感動しました!もう最高すぎて苦しい!!!!! (2019年2月15日 21時) (レス) id: 672796e13d (このIDを非表示/違反報告)
みりあ - 素晴らしい作品でした! (2019年2月15日 21時) (レス) id: 672796e13d (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - ゆづきさん» うわわ、とっても嬉しいです!コメントありがとうございます(*´v`)亀更新ですがお付き合いいただければ幸いです! (2017年6月10日 23時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - とても、面白かったし感動しました! (2017年6月10日 22時) (レス) id: 029d1006b7 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 花さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます(*´∀`*)なかなか更新出来ずすみません…(´・ω・`)なるべく更新するように頑張ります! (2017年6月5日 7時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:AS | 作成日時:2017年4月24日 17時