Stray Lovers 3 ページ32
『中也、一寸来てくれないかのぉ……、Aが酔っ払ってしまって……』
尾崎からの1本の電話に、中也は仕事を放り出してバーに駆けつけた
勢いよくドアを開けて中に入ると、困った顔の尾崎と、カウンターに突っ伏したAがいた
駆け寄ると、尾崎は安心した表情をして中也に薄く微笑んだ
「中也……済まないのぉ、好きなだけ呑めと言ったら……水を呑むように飲み続けたのじゃ」
私の財布が破綻する所じゃったわい、と面食らったように言う尾崎に、中也は冷や汗を垂らした
Aは、いくら呑んでも酔わない酒豪なのである
いや、大酒豪と言ってもいいくらいだ、首領といい勝負が出来るほどに
だがしかし、酔い潰れる程呑んだのだ
その証拠に、カウンター周りはカクテルのガラスで溢れかえっていた
酔った時のA程、大変なものは無い
中也は尾崎に「Aがお世話になりました」と頭を下げて、Aの肩を叩く
「A……ほら、帰るぞ」
中也が声を掛けると、Aはゆっくりと赤い顔を上げ……重たげな瞼を2、3度瞬かせると、にへらぁっと頬を緩めた
「あれぇ……、中也がいる……中也だぁ」
蕩けた表情と、幼い口調に、中也の理性はグラグラと揺さぶられる
「A、一寸捕まってろよ」
そんな首皮一枚の理性を何とか保ち、中也はAを横抱きにした
Aは素直に中也の首に手を回して、中也の身体にスリスリと顔を寄せる
「うふふ、中也のにおい」
(此奴……、俺の理性を崩しにかかってきやがる……!)
中也はAを見ないようにしながら、Aを助手席に寝かせると、愛車を走らせ始めた
「中也ぁ……?これからどこ行くの?」
首を傾げるAに、中也は言う
「家に帰るんだよ、俺達の家にな」
「そっかぁ」
またにへらっと笑って暫くすると、Aは寝息をたて始めた
「良かった……」
すやすやと眠るAの姿に、中也は安堵した
「今のお前相手に……、理性抑えられそうにねェからな」
十年かけて恋人になった、愛するAのことを、中也は大切にしたいのだ
(今Aに触れたら、俺は……)
先日の出来事を思い出し、中也はハンドルを強く握った
起こさないように横抱きにしたまま、中也はAを寝台に下ろした
眠ったままのAの何処かあどけない表情に、中也は微笑む
「……おやすみ」
頬にキスを落として、中也が足を踏み出すと……
ぐいっ、小さな力に中也の腕は引かれた
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みく - こんなに心をうごかされた作品は初めてです!感動しました!もう最高すぎて苦しい!!!!! (2019年2月15日 21時) (レス) id: 672796e13d (このIDを非表示/違反報告)
みりあ - 素晴らしい作品でした! (2019年2月15日 21時) (レス) id: 672796e13d (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - ゆづきさん» うわわ、とっても嬉しいです!コメントありがとうございます(*´v`)亀更新ですがお付き合いいただければ幸いです! (2017年6月10日 23時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - とても、面白かったし感動しました! (2017年6月10日 22時) (レス) id: 029d1006b7 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 花さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます(*´∀`*)なかなか更新出来ずすみません…(´・ω・`)なるべく更新するように頑張ります! (2017年6月5日 7時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:AS | 作成日時:2017年4月24日 17時