伝え愛 16 ページ17
「私はね……中也が君に会いに行く前から、君に会いに行っていたんだ」
「中也が君を好きになるより前に、私は君の事を好きになっていた」
「……でも、私にはね……最初から君に触れることすら許されなかったのだよ」
髪の毛をときながら優しく頭を撫でる太宰は、泣きそうな子供のような表情をしていた
間もなく、幼き太宰に命令されたのは、少女と"友達"になり、少女の異能力を解除するということだった
そうすれば、少女をマフィアに従わせることが出来る、と
太宰はそこで諦めたのだ
これが自分の運命なのだと
(永遠に少女の英雄になれないまま、毎日告げられなき想いを想い続けるのなら、いっその事嫌われてしまおう)
少女の部屋を訪れて、少女の動く姿を見て、話す可憐な声を聞いて
至福を感じながら、その心に、顔に、仮面を貼り付けて
1人の孤独な少年は、完全に孤独な、悪役になったのだ
少女の泣く姿を見ながら、少年は思った
(これで、良かったんだ)
「今だから思うよ……森さんの言葉なんか無視して、君に触れていれば良かったって」
「そうしたら、君は私を慕い、好きになったかもしれないね」
太宰はAを正面に抱き締めた
「少しだけでいいから、この二日間くらい、私に対して笑顔を見せて欲しかった」
Aの頬を撫でて、太宰は自嘲気味に笑った
「……睡眠薬で眠らせるような男だから、嫌われちゃうんだろうなぁ」
太宰は身体を離して、Aの首筋に唇を這わせる
「……ごめんね、こんな悪い男で」
そうして、Aの首筋に一つの赤い華を咲かせた
「好きだよ、A……」
(この嘆きが、この想いが、伝わらなくても、私はAを想い続ける)
太宰の切ない呟きは、虚空を彷徨い、Aに届かず、消えていった
「……ん」
朝陽を受けて、Aはふと目を覚ました
見慣れない木目の天井に、Aは首を傾げる
何かに包まれているような温かさに、Aはハッとし、勢いおく飛び起きようとするも、身体は回されている腕によって、起き上がれない
顔をぐるりと回して見上げれば……寝息をたてる太宰の顔があった
「きっ、きゃあああ!!」
Aは咄嗟に、太宰の頬に平手打ちをかました
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みく - こんなに心をうごかされた作品は初めてです!感動しました!もう最高すぎて苦しい!!!!! (2019年2月15日 21時) (レス) id: 672796e13d (このIDを非表示/違反報告)
みりあ - 素晴らしい作品でした! (2019年2月15日 21時) (レス) id: 672796e13d (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - ゆづきさん» うわわ、とっても嬉しいです!コメントありがとうございます(*´v`)亀更新ですがお付き合いいただければ幸いです! (2017年6月10日 23時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - とても、面白かったし感動しました! (2017年6月10日 22時) (レス) id: 029d1006b7 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - 花さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます(*´∀`*)なかなか更新出来ずすみません…(´・ω・`)なるべく更新するように頑張ります! (2017年6月5日 7時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:AS | 作成日時:2017年4月24日 17時