【文スト】伝え愛【中原中也】

伝え愛 14 ページ15

太宰は頭から血を流したまま、執務室へと向かった


「首領、失敗しました」


訪れた太宰の怪我に、森は目を見開く


「太宰くん、君大丈夫かい？」


「平気です、これくらい慣れていますので」


太宰は頭の血を拭って言葉を続けた


「彼女ですが、人間失格を発動する前に感ずかれました……その後に断固拒否されまして」


そう、森の作戦はこうだった


太宰がAに触れ、人間失格を発動し、Aの異能力を解く


そして、我々に従わせる、という魂胆だったのだがー……


「困ったものだねぇ」


ため息をつく森に、太宰は提案する


「どうしますか、寝ている隙をついて断固拒否を解除……」


「いや、それはしないよ、私は……Aくんにこれ以上悪い事は出来ないからね」


森は、自分のしたことを悲しむような、Aへ申し訳ないような色の瞳を細めた


森は、Aにしたことを後悔しているのだ、
そして、断固拒否されなくなったら、きちんと向き合って、謝りたいと


「彼女は……もう我々から解放した方がいいのかもしれないねぇ」


森はそう呟くと、雨降る横浜の夜景に目を向けたー





(寒い)


どんなに布団にくるまっても、どんなに自分で自分を抱き締めても、割れた窓からの外気が寒かった


それだけじゃない、心が寒い


「中也くん……」


震える唇から出たのは、彼の名前だった


きっと、頭の隅ではわかっていた


(ちゃんと気づいてた……、中也くんが、人を殺したって)


尋常じゃない、血の匂い


わかってた、けれど、どうしても信じたくなかった


(信じてしまったら……中也くんを嫌いになってしまうかもしれないから)


平気で人を脅し、人を傷つけるマフィアと、同じように


「中也くんのこと……嫌いになりたくないよ」


あの日、中也が言わなかったのは、きっとAに知られたくなかったからなのだろう


(私が知ったことを知ったら、中也くんはー……私から離れるかもしれない)


そう、中也はAが悪を嫌っているのを知っているから


Aは中也がしてしまったことが、自分が少しでも中也に怯えていることが悲しくて、嫌で、ただ閉じた瞳から涙をこぼし続ける


もう、何も聞きたくない


ざぁさ、ぁ……


雨の音が、雨の匂いが、段々消えていく


「ーっ！めっ！だめっ！」


叫んで叫ぶけど、声はどんどん遠ざかる


(また私は……全てを断固拒否するの？)


遠ざかる音の中に、自分を呼ぶ声が聞こえたような気がした

伝え愛 15→←伝え愛 13

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

ラッキーカラー

あずきいろ

おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした！

ラッキーキャラクター

樋口一葉

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す