01# 月蝕 ページ3
薄暗い部屋の中、吐息に揺れる蝋燭の灯火。
黒い茨が描かれた透明なタクトを、一定のリズムで振る、一人の少女。
「それで、何だって……?」
少女はタクトを止めず、夜景を眺めながらそう言う。
すると、桜鼠色の髪を持った青年が口を開いた。
「赤と、青が色々と喧嘩してんの。で、無色が悪趣味な悪戯してる」
少女は少し黙り込んだ後、呆れたように言った。
「……要約しすぎ。ちゃんと話して」
「名无、黙っとけ」
「はぁーい」
黒いマスクを着けた青年が制止をかけ、代わりに話し始めた。
「吠舞羅と青服が敵対しているのは知ってるな?」
「マガツを見ていれば嫌でも分かる」
「無色が動いてるのは?」
「知ってる」
その言葉は最初から全部分かっていたということを証明するものだった。
マガツはイラついた様子で、少女に近付き、肩を掴んだ。
「御子神……お前知ってて名无にケチ付けたな?」
“御子神”と呼ばれた少女は肩に乗せられた手を払う。
すると、少女は振り返り、タクトでマガツの顎を上げると小さく笑った。
「何の事だか」
「チッ……」
マガツは自分の席に戻ると、黙り込んだ。
それを見ると、少女の傍らにいた男が口を開いた。
「では、発言宜しいでしょうか」
「いいよ、ヤヤ」
「先日、“黒の王を知らないか”と叫ばれながら赤に追われまして」
“ヤヤ”と呼ばれた男は少女とマガツに目を向け、そう言った。
「雨水守、誰だった?」
「恐らく、ヤタガラスかと」
「美咲か……」
「シラハマとスメラギもそんなようなこと言ってた気がする」
少女は目の前の3人の男にそう告げた。
「ならさ、吠舞羅に手出してもいいよね?」
「俺は行かねえ」
「どうしますか、A」
「別にいいよ。ヘマしなければ」
「りょーかーい」
「……名无うるせえ」
「和泉のカタブツ! 八田と張り合って来い!」
「こんのっ……」
マガツ、改め、和泉が名无を殴ろうとした時、和泉の体は動きを止めた。
和泉の視線は自然とAに向く。
「止しなよ……。ナナシも。ヤヤ、2人が帰って来たらまた話すからお茶の準備をお願い」
「御意」
Aがタクトを振り上げると、和泉は座り込んだ。
「……すまない」
「あんまり“使わせないで”ね」
「あぁ」
(主上、伊古奈と結妃って何処行ってんの?)
(さあね。特にシラハマは何も話してくれないから)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜久蘆ヶ(プロフ) - 紫蘭さん» コメント有難う御座います。ちょっとネタ切れを起こしていて更新は気紛れなのですが、宜しくお願いします。主人公ちゃん結構フラフラしてるんでね、オチはまだ先ですねえ(笑) (2016年9月19日 20時) (
レス) id: f39c732943 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - とても好みの作品です！読んでいて飽きないし面白いです。私的に尊さんと付き合わないかなという願望があります← 更新頑張ってください！楽しみにしてます(*^^*) (2016年9月19日 20時) (レス) id: 3701746fb2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：久遠深ヶ | 作成日時：2016年1月4日 4時
