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「ショータ」
俺が高三で卒業式の日。山田は俺を呼んで、心配とも怒ってるともいえる顔で尋ねる
「Aちゃん、会いに行かねえの？」
「ああ、平気だ」
「B組の奴、告るってよ」
「…そうか」
「それが平気な奴の面かねぇ？」
あの後、あいつは律儀に一度も俺に干渉してこなかった。水曜も来なかった。部屋はもちろん訪れてこなかったし、一緒に帰ってた頃みたいに図書室で勉強する姿も見えなくなった
すると、ヒーロー科の三馬鹿の一人と別れたらしい、と噂が一気に広まった。同級生から猛烈なアプローチを受け、上級生から公開告白され、下級生から逆バレンタインをもらい、一気に大人気になった
ただ、誰とも付き合わなかった
好きな人います、と全て断っていたという
「あんないい子手放すのは勿体ないぜ？」
「いつ死ぬかもわからんし、普通の生活なんてできないんだ。不憫だろ」
「あの子ならそんなこと言わんだろ？」
「とにかく、俺には勿体ないんだよ。いいんだ。もっといい奴がいっぱいいるさ」
「…そうかい？」
下級生の席が並ぶ中、遠目に見たけど一発で分かった。綺麗だな、と思った。背筋をピンとしていた。髪は伸びてて、赤い唇をきゅ、と閉じていた
山田に言ったのはほぼ本心で、少し嘘が混じってる。ヒーローは、普通を与えられない職なんだ。今まで見たいに何気ない会話して、飯食って、テレビ見て…そんなことできなくなる。だったら最初から消えちまった方がいい
それは建前で、本当は自分が怖いっていうのもあった。Aに一緒にいることを拒否されるのと、ある日突然俺を失ったらどうなるかって未来
臆病で、それを隠すために言った我儘。多分Aは気づいてる。だって賢い。俺には勿体ないくらい綺麗で、優しくて。どうしようもなく、愛おしい
「この先ずっとそのスタンスでいんのか？」
「多分な」
「おいおい素直になっといた方がいいぜー？」
「いいんだよ」
「…あの子の連絡先持ってるから。気が向いたら言ってな」
微笑んで、俺に便箋を差し出す。淡い水色の、あいつが小さいころはまってたハートの折り方。一発で分かった。四つ葉柄の、控えめで儚げな便箋だった
おめでとう。頑張って。丁寧に開くと、それだけ書いてあった。綺麗で、達筆な字だった
シャープペンで書かれた文字を、人差し指でなぞった。空白がいっぱいあるのに小さく書く癖。まだあるのか。愛しくて、視界がぼやけた。山田は笑って、何も言わなかった
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William(プロフ) - わ~コメントありがとうございます(^^)あのお話は数年間懐で温めてた自信作だったのでそう言っていただけて嬉しいです。番外編、頑張って更新しますので楽しみにしていてくださいね。いつもありがとうございます。 (2020年5月24日 23時) (
レス) id: 3ee161ce59 (このIDを非表示/違反報告)
モンキーリボン(プロフ) - 相澤先生のお話で目を舐める話を最近読んですごく印象に残ってたから読んでみたんですが、同じ作者様だったんですね！！好きです！！ (2020年5月24日 23時) (レス) id: 8f61effecf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：William | 作成日時：2020年5月23日 0時
