カトレア ページ8
「ただいま〜はぁー疲れたぁ」
サーはスーツ姿のまま私を迎え入れようと来てくれた。彼もつい先程着いたみたいだ。
私は彼に抱きついてただいま、ともう一度言う。
彼はおかえり、と返して普段つけない香水の匂いに少し反応して尋ねる。
「今日は随分とめかしこんでいるな」
「…急な仕事があったのよ」
「化粧を落とせ。肌が荒れるぞ」
「……動けない…」
深いスリットが入ったシンプルな黒いドレスを見て彼は言う。
抱きついたまま体重をかけると、サーは溜息を吐いて私を洗面所まで運んだ。
脱げ。冷たく言い放ってピシャリとドアを閉められる。
私はノロノロとすべて服を脱ぎ、結んでいた髪を解いていつのまにか用意されていた寝間着に腕を通す。
リビングに戻ると彼はスウェットを着て雑誌を眺めていた。
けれど意識もほとんどない私を見て、苦笑して寝室まで運んでくれる。
「あー違う…奥から二番目の…」
「これか？」
「……貴方から見て右側の…」
「これか」
「それよ」
メイク落とし、化粧水、美容液、保湿クリーム
ぼんやりと体を起こして座っていると、彼はドレッサーに並んだボトルを取って私の顔に塗っては次はどうするのか尋ねる。
ひた、と彼の手が頬に触れる。手首を掴んで頬ずりをすると私の顔が半分覆われてしまう。
「…手が大きいわ。指も長いわね」
「背丈が大きいからな」
「それにしても、よ」
「嫌いか？」
「まさか。とっても魅力的よ。素敵だわ」
「それは光栄だ」
サーは笑って、両手で私の頬を包み込んで唇を重ねた。
私は猫背気味になって彼の背中に腕を回した。
「未来」
「なんだ」
「…いかないで」
「どうしたんだ？」
「…どこにも、いかないで」
側に…耳元で囁く。サーはギョッとして、顔を歪めた私の頬を撫でてから、長い両腕ですっぽりと包み込む。
「君は時折子供っぽいことを言う」
「…お嫌い？」
「とても愛らしい。魅力的だ」
「それはよかった。光栄よ」
広い肩に顔を埋めて私は笑う。
彼は一度体を話して私の顎に指を添えて再び長く唇を重ねた。
「好きよ」
「私もだ」
「大好きなの」
「私は愛している」
「ふふふ…張り合わないでよ」
「事実だぞ」
私は回した腕に力を込めて、彼を抱き寄せた。彼は私の耳にキスを落としてクツクツと笑った。
低い声は穏やかだった。優しい匂いがした。
薄暗い部屋で、オレンジのスタンドライトと眠気の中に微睡んで、意識は心地よく遠のいた。
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有栖 - 家族の前で！！！！！！！！！泣きました！！！！！！！！！さいこうです！！！！！！！！！ (2021年10月20日 18時) (
レス) @page22 id: fca2a71135 (このIDを非表示/違反報告)
William(プロフ) - 外道さん» とても直接的なコメントありがとうございます笑思いが伝わってきました。そういっていただけて嬉しいです。これからも不定期で思い出したように更新しますので是非楽しんでいってくださいね(*^^) (2020年5月20日 8時) (レス) id: e02290bc81 (このIDを非表示/違反報告)
外道(プロフ) - 泣きました (2020年5月20日 1時) (レス) id: 3ba5823a10 (このIDを非表示/違反報告)
William(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» ありがとうございます。サーナイトアイの小説は少ないので悲しくて…考えに考え抜いた結果この作品を書くに至りました。そう言っていただけて嬉しいです。更新頑張るのでぜひ楽しんでくださいね(^^) (2020年4月19日 22時) (レス) id: 3ee161ce59 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - サーーーー！！！！！！！素敵な作品をありがとうございます！出会えて良かったです！ (2020年4月19日 21時) (レス) id: f760c82735 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：William | 作成日時：2020年4月18日 23時
