番外編〜コルセット〜 ページ34
これは私が貴族生活をそこそこ楽しんで来たある日のことだった。
毎朝お決まりのセットをするために馬鹿でかい三面鏡に座ることを厭わなくなってきた頃、ずっと抱えていた一つの疑問をメイドにぶつけてみた。
「ねぇ…、どうしてコルセットって付けなきゃいけないのかしら。」
彼女はこの家で働くメイド達の平均年齢から言うと、当然私よりかは年上だが中でも著しく若い。
よく喋るが威勢だけはよかったと思う。
私の質問にメイドは手に持っていたブラシをカタンと置いた。
「…そんなの決まってるじゃないですか!?良家の上流階級の紳士達は女性が気絶すると、かよわくて守ってあげたくなるんですよ。」
「でも普通そこまでするかしら…?」
メイドからブラシを受け取ってベットの上で髪をとかしながら言うと、メイドが忙しく部屋をうろつきながら顔を顰めて振り向く。
「コルセットを付けないことは罪に値します!と、く、に!…意中の男性からは嫌われてしまいますよ?」
「…謎のこだわり。それに意中の男性なんて私にはいないわ。」
私が軽く引いているとメイドはガクッと肩を落とした。
「はぁ…、ヴィクトリア様に好意を抱いている方は沢山います!街に敷いて歩けるくらい。」
「し、敷いて歩く…。」
「出過ぎたことを言いますが例えば、鍛冶屋の青年。なんて言いましたっけ?…あっ、ウィル・ターナー!それからキャプテン・ジャック・スパロウを始めとした海賊達もヴィクトリア様に首ったけだとか!」
「ねぇ、この話まだ続くの?」
「終いには海軍の提督まで!キャー!いいなぁ…!」
メイドは私にやっかみと憧れの目を向けてくる。
「でもこの間サロンで、隠れてコルセット外してた人いたわよ?」
彼女はエリザベスと同じ色のコルセットの固く結ばれた紐に、使用人に届けさせたナイフを一生懸命あてて1本づつほついていた。
カーテンからその様子が丸見えだったとはいえ、失神するよりは何倍も賢い選択だ。
「…その方が非常識なだけです。もう中にはわざと倒れちゃう方もいるみたいですから!」
「コルセットって結構命懸けなのよ?そんな馬鹿な真似するような人…」
「エリザベス様は?」
メイドは私の話を全部聞かない内に言った。
確かにエリザベスのお陰で私までもが道連れになって見晴台から落ちたことは巷でも一躍有名になっていたのだ。
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Caesar(プロフ) - ティコ。さん» 返信遅れて本当にすみません!!m(_ _)m面白いという御言葉すっごくありがたいです!!ありがとうございます!!!更新頑張りますね! (2018年3月1日 19時) (レス) id: 0b14e887c8 (このIDを非表示/違反報告)
ティコ。(プロフ) - めっちゃ面白いです!!更新頑張ってください!あと、1つ質問なのですが、名前は固定ですか? (2018年2月28日 12時) (レス) id: e878cfb355 (このIDを非表示/違反報告)
ダージリン(プロフ) - むらなかさん» 追記:本当にありがとうございます! (2017年8月7日 21時) (レス) id: 85ba8e2866 (このIDを非表示/違反報告)
ダージリン(プロフ) - むらなかさん» あれ見たらファンになっちゃいますよね!その気持ち凄く共感できます!! (2017年8月7日 19時) (レス) id: 85ba8e2866 (このIDを非表示/違反報告)
むらなか(プロフ) - 私もパイレーツファンでいつも楽しく読ませていただいてます。更新楽しみにしてます!笑笑 (2017年8月7日 17時) (レス) id: ce8b8b5d42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ダージリン x他1人 | 作成日時:2017年7月1日 15時