蒼眼のヴィクトリア

鍛冶屋の青年 ページ7

嫌々だったものの、メイドのセットはやはり上手かった。


跳ねっぱなしの癖毛は綺麗にカールされ、元々色白な肌には更に透明感が加えられた。おまけに唇の赤い艶。



出来栄えの良さに、私の目が鏡に釘付けになっているのを見るとこれみよがしに「どうです？うまく仕立てたでしょう。ヴィクトリアお嬢様のお顔立ちの良さが引き出されていますわ。」なんてメイドが言うものだから滑稽だった。



エリザベスや総督はどこかと一階へ行ってみるとエリザベスが同年代くらいの好青年な鍛治職人と親しそうに話をしていた。



邪魔をしてはいけないと思い、足音を潜めて馬車に乗り込もうとしたが案の定鍛冶屋に声をかけられてしまったので、仕方なくそちらに向き直った。


「ウィル、この子はヴィクトリア・シャネル。私の妹よ！」


エリザベスが堂々と妹だなんて公言するものだから、鍛冶屋は驚いて目を見開いていた。



「…親戚の子だ。家で預かってる。」



総督がなんとか誤魔化し軽く挨拶を交わすと鍛冶屋は少し顔を赤らめて「Ms.シャネル。とても…お美しいですよ。」と言った。



「あなたの方が歳上なんです。私のことはヴィクトリアで構いませんから。」



「私もエリザベスでいいって言ってるじゃない。ウィル。」



「恐れ多くて、Ms.スワン。Ms.シャネル…。」



鍛冶屋は私達にMs.を付けることでその身分の違いを噛みしめているようで、なんだか不憫だった。



「止めないか、ヴィクトリア、エリザベス。彼の方が礼儀をわきまえてる。」



「これは…、無理を言って失礼しました。」



「そう、ご機嫌ようMr.ターナー。」




一応私は謝って置いたがエリザベスは皮肉混じりにそっぽを向いた。

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