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「──ある。」
たった一言。声色が、空気が、がらりと変わった。
真剣なそれは昨日見ていた、推理する時の探偵の顔。いつかのように静かになった店内で彼の話が始まる。
「店内の装飾品や備品の具合いからこの店はまだ開店して日が浅い。蘭や他のお客の記憶には昔からある店で定着している。改装された形跡もない。そして俺の記憶では数ヶ月前までこの場所は確かに廃ビル同然、シャッター街の一部だった。」
「……そうらしいね。」
「そうらしいって、なんで他人事なんだよ。」
「だって、それが謎の一つだからね。私は工藤くんの記憶通り、数ヶ月前に“この店”を開店した。なのに開店当初から色んな人の記憶にこの店が存在し、皆私の存在を認知している。不思議な話だけれどね。」
「……まじかよ。」
「大まじ。なんならキミのお母さんも私の事をご存知だったよ。」
「母さんが?!──て事は俺も昔来た事あるのか。」
「そうだよ、キミと蘭ちゃんとお母さんの三人でね。
…私からしたらそう遠くないまだ最近の事だよ。」
何か言いたげな表情をしているが、まだこの謎を掘り返すには時間が足りない。
「“この店の不思議な謎”手に負えそうかな、探偵さん。」
「……時間がかかっても解いてやるよ。非科学的なのが引っかかるけど、色々調べていけば何かしらピースは揃うはずだ。」
「時間はたっぷりある、って事でいいかな？」
「あぁ、この店の事少しだけでも確認出来ただけでも違うからな。」
「ありがとう。私も少しだけ肩の荷が軽くなったかも。そう簡単に人に話せる内容じゃないからね。」
「しかし頭が痛くなりそうな謎だな。情報が足りなさすぎる。」
「なんかごめんね…？」
「ほんとだよ…」
大きな溜め息と共に項垂れる工藤くん。
だがその肩は小刻みに揺れていて、その姿が可笑しく気付けば二人して吹き出し笑い出す。
──あぁ、彼は本当に凄い人物だな。
「そろそろ向かった方がいいかも。お姫様を待たせるのはよくないからね。」
「だな、続きはまた時間作ってくるわ。」
「…工藤くん、気を付けて行くんだよ。」
「おう、ありがとう店長！」
またこうして来てくれた事に感謝しながら、この後の展開を思い出して意識的に“あの日と同じ言葉”を口にする。
彼はそれに気付かず待ち合わせ場所へと向かう為、変わらない笑顔で店を後にした。
続く
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雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください！ (12月9日 5時) (
レス) @page12 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
Kichi(プロフ) - ayastさん» ayast 様 応援ありがとうございます。こだわりつつ書いているので、不思議さを感じていただけてとても嬉しいです。遅筆ですが頑張らせていただきます。 (6月6日 22時) (レス) id: 3d03e69c56 (このIDを非表示/違反報告)
ayast(プロフ) - お話し読ませていただきました‼︎とても不思議な設定で私も不思議体験しているようです楽しく読ませてもらいました‼︎これからも応援しています！ (6月4日 23時) (レス) @page7 id: af36fdec29 (このIDを非表示/違反報告)
Kichi(プロフ) - 有理さん» 有理 様 感想ありがとうございます。楽しんでいただけて嬉しいです。お言葉を糧に頑張らせていただきます。 (5月24日 23時) (レス) id: 3d03e69c56 (このIDを非表示/違反報告)
有理 - 最初から読んできました！凄く理想な話です！楽しく読ませてもらってます！ありがとうございます！無理せずに頑張ってください！ (5月20日 9時) (レス) @page4 id: a05ef41127 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kichi | 作成日時：2023年5月12日 15時
