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「部屋ここなので、ありがとうございました。」
「気をつけてね、無理せずに」
井口さん達が荷物を部屋の中に置いてくれて、手を必要以上に使うことなくホテルへ帰還できた。
「じゃあまた、」
「あっ、待って」
ドアを閉める直前、新井さんが閉まるドアを手で押さえた。
「そのままにしておいたらあぶないから、大希の家で応急処置していきなよ」
「えっ、」
「顔も怪我してるし、女の子だから早めに処置した方がいいよきっと。」
憧れの人の家にこんな満身創痍で上がれるわけない。
第一、靴もスリッパだし…。
「大丈夫、すぐ終わるから」
「でも、ほら…その、」
「Aちゃん、そんなに大希のこと気にすんだ。ね、理」
「えっ!?いや、恩師なので!」
「そういや飲んでる時も大好きとか言ってたっけ?」
「ああもう分かった!行きますから!」
*
「…お邪魔します」
部屋に入っても大希さん出てくる様子は無かった。
「理、俺なんか手当できるものないか聞いてくるわ」
「分かった、Aちゃん、座っていいよ」
男の人の家と言うだけで落ち着かないのに大希さんの家なんて。
家はしっかり整理整頓されていて、彼の好きそうな絵画や置物が所々に飾られている。私が大希さんの家を鑑賞している中、井口さんは勝手に冷蔵庫を開けてお茶をコップに注いでいた。
「__あのー、ほら、絆創膏とか入ってる所に色々入ってる。つーか何に使うん?」
「分かんない、どこ?」
常田さんの声だ。新井さんに処置道具の場所を教えている。
なんて言おう、気まずいな。
さっき裸足で家の隣のホテルへ入っていった後輩が今度は満身創痍で自分の家にいるのだから、きっとびっくりするだろうな。
「その引き出しの___え、Aちゃん…?」
「お邪魔してます…」
眠っていたのか、目をこすって私をもう一度見た。
幻とでも思ったんだろうか。そりゃあ思うか。
「…顔、どうしたん」
「怪我しちゃって、大したことないんですけどね」
曇った表情の常田さんは怪我?と言いながら私の隣に座った。
「手も。」
「あはは…」
「裸足だったんも、その怪我も全部男が原因なん?」
「……はい」
「はあ…なんですぐ言わねえんだよ」
呆れた様子の彼に、私は無理やり作った笑顔で返すしか無かった。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ 応援してます٩(^‿^)۶ (2月5日 2時) (レス) @page12 id: 17ec247796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なーご | 作成日時:2024年1月30日 4時