revolving lantern : (ページ31)

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「からかわないでって言ったのに」

「そうだっけか」

クスクスと笑う大希さん。
いつまでも笑われているのが悔しくて、何かしてやろうと考えるけれどそれすらも見透かされているような気がした。

もういっその事、泣いたフリでもしてやろう。
大希さんにも少しぐらい困ってもらわなければ。

「......」

「Aちゃん？」

しばらく俯いて声を出さずにいると、大希さんがようやく心配そうな声で名前を呼んでくれた。

「...っ大希さん酷い」

精一杯の演技で涙ながらのつもりで声を絞り出すと、意外と上手くできた気がする。自分でも結構上手すぎて少し笑いそうになったので顔を両手で隠そうとしたその瞬間、素早く手首を掴まれ顔を隠しきれないまま私を覗き込む大希さんと目が合う。

「A」

心臓がドクンと跳ねる。
いつもみたいに”Aちゃん”ではなくて
呼び捨てでそう呼ばれたのはこれが初めてだった。

さっきまで上がっていた口角も、呼び捨てで呼ばれたせいで今度はぽかんと口を開けてしまった

(違う違う、仕返ししてやるんだ。)

空いた口を閉じて泣くフリを続けた。

「...悪かった、もうしねえから＿＿」

私の手首をぎゅっと握る大希さんの表情は、これまでに見た事ないぐらいの焦り様だった。曲の締切が残り1時間の時の方がもっと余裕そうな表情をしていたと思う。

「ぷふっ」

そんな大希さんに思わず吹き出してしまった。
大希さんはそんな私を見て数秒固まったが、すぐに私が嘘泣きしていたと理解したようだった。

「......あー、マジで...」

「ふふ、あははっ、大希さんったら」

手首を握っていた手は離れて、大希さんは手で自分の目を覆った。

「泣いちゃったと思いました？」

何も言わない大希さん。
どうやら完全に引っかかってくれたようだった。

「大希さーん」

そう言って目元を覆う手の間から目が見えないか覗き込んでみる。

「そんなにびっくりしたんですか？」

返事は無い。怒ってしまったのかと少し不安になってくる。

「大希さん、あの......っわ、」

謝ろうとした時、突然引き寄せられた。そして正面から肩に頭を乗せてきた大希さんからは重い吐息がこぼれていた。

「大希さん、？」

行き場のない両手を宙に浮かせたままそう呼びかける。

「.......マジあせった」

聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で大希さんはそう言った。