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タクシーに乗って、道中コンビニで少し買い出しをしてから大希さんの家に着いた。大希さんの家にあがるのは2回目だ。
「適当に座っといて」と言われて、この前も座ったソファの同じ場所に座った。そして、コンビニの袋から大希さんの選んだお酒と自分のお酒を取り出して隣に座った大希さんと乾杯した。
「なんか懐かしいですね」
同じような光景がフラッシュバックした。
この前来た時も、こうして隣同士でコーヒーを飲んだんだっけ。それに手を握ってからかわれたりもした。
顔が少し熱くなった。あの時の、手を握ってじっと私を見つめる大希さんをふと思い出してしまったからだ。
「どうした?」
「今日はからかわないでくださいね」
「からかう?...あー、あれか」
大希さんは私に言われるまで忘れていたんだと思うと少し寂しくなった。
私以外の女の子ともこうやって家でお酒呑んだりしているんだろうか。いつ来ても綺麗にされている部屋は大希さんが几帳面だからとかいう理由じゃないのかもしれない。
私にした事なんて覚えてなくて当然だ。
しかも到底、私はやきもちを妬ける立場では無い。
「わーったよ、しねえから」
「な?」と言って笑う大希さんは私の頭に手を乗せる。わざとなのか無意識なのかしらないけれど、これでからかうなと言って辞める人ではない事を思い出した。
「...あぁーっ、もう、なんか見ましょうよ!ネトフリとか!」
「はいはい」
頭に乗った手を払い除けて、机にあるリモコンを手に取ってテレビをつけた。勢いに任せて勘でポチポチとボタンを押してネトフリにたどり着こうとしているが、地上波と暗い画面を往復するだけだった。
「ここ」
リモコンを持つ私の手に大希さんの手が重なり、彼がボタンを押すとやっとNetflixの文字が出てきた。
「...ありがとうございます」
「ん」
1度バレないように深呼吸した。”大希さんはきっとみんなにこうなんだ”と言い聞かせる。
もし動揺してるのがバレて「そんなつもりじゃねーんだけど...」なんて言われたら死んだ方がマシだ。
それでも早くなる鼓動を見て見ぬふりをするつもりで無心で映画を選んだ。
*
よりにもよって選んだのは不倫映画だった。
人気ランキングのTOP10に入っていたし、まあこれでいいかと何も考えずに再生してしまった。
そしてなにより
特に何も言わない大希さんが逆に怖かった。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ 応援してます٩(^‿^)۶ (2月5日 2時) (レス) @page12 id: 17ec247796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なーご | 作成日時:2024年1月30日 4時