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「___ていうか結婚って何?」
1周まわって悲しみが怒りに変わった様子の井口さん。言っていることもお酒のせいでよく分からなかったりして、コロコロ様子が変わる井口さんを見ていると私も面白くてお酒が進んでしまった。
「本当なんなんでしょうね」
「Aちゃんも思うよね?そうだよね?」
井口さんは「やっぱりそうなんだよ大希」と何がそうなのかは分からないが大希さんに熱く語り掛けていた。
「でも、もうそろそろじゃねえの?」
「...一応」
「え...結婚するの?」
「一応ですよ、本当に一応」
「待って、そっち側!?泣きそう」
そう言ってまた泣いてしまった井口さん。今日何度目になるか分からないが、「お前うるせえ」と大希さんに笑われながら軽くお叱りを受けている。
「暴力振るう男なんかだめだよお...」
「最近は減ったんで心配しないでください」
「減ったじゃダメじゃん
しかも元々しないのが当たり前でしょ」
軽くテーブルをバンッ、と叩く井口さん。
酔っているとはいえ、彼にも迷惑をかけたのに心配してくれているのは嬉しかった。
「俺もそれは理と同意見」
大希さんは煙草に火を付けながらそう言う。
「つうか何かあったら言えって言ったろ」
「暴力振るわれたとかじゃなくて」
こういうのとか、と苦笑をこぼしながら自分の首元を触った。
あれから殴られたりする事は1度もなかった。むりやり行為を始められることももう慣れてしまったし、そんな事憧れの諸先輩方に言う訳にもいかない。
少しの間沈黙が続いた。どうにかしてくれという気持ちを込めて井口さんに声をかけようとしたが、こういう時に限って眠っている。
「井口さーん...」
起きる気配は無かった。どうやら本当に寝落ちてしまったらしい。
「和樹に連絡するわ」
小さくいびきが聞こえる井口さんを見て思わず笑ってしまう。あんなに綺麗な歌声で歌うのに相変わらずすごいギャップだ。そんなことを思っていると大希さんが迎えに来てやって、と電話で話していた。
暫くしてお会計を済ませた後、すぐに新井さんが店の前まで車で迎えに来た。冬眠中の熊のような井口さんは起きる気配も無く、大希さんと2人で肩を持ってお店の外まで連れ出した。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ 応援してます٩(^‿^)۶ (2月5日 2時) (レス) @page12 id: 17ec247796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なーご | 作成日時:2024年1月30日 4時